城東支部

学びの場

[2025/07/20]2025年度城東スキルアップ5月開講コース(第3回)開催報告

2025年7月20日(日)、城東スキルアップ5月開講コースの第3回が、中央区の京橋区民館で開催されました。全受講生 29 名のうち、都合により欠席された3名を除き、26 名の方が参加しました。

第3回目のプログラムは以下のとおりです。
1.財務分析の実践(講師:小林雅彦会員)
2.地域支援(講師:高田直美副支部長)
3.知的資産経営(講師:上田正史会員)

1.財務分析の実践(講師:小林雅彦会員)
 午前中の前半は「財務分析の実践」と題して、小林雅彦講師より、中小企業の財務の特徴や財務分析の実践的な進め方、支援にあたっての現場での対応について詳しくご説明いただきました。
 本講義では、まず受講者全員でのグループワークからスタートしました。事前課題として各受講生がある中小企業の決算書(3期分)の財務分析を行い、当日はその結果をグループ内で共有・議論しました。受講生の様々な意見に接することで新たな気づきを得られ、学びにつながりました。
 グループワーク後の解説の中で、支援を必要とする中小企業の多くが赤字や資金繰りに課題を抱えており、特に債務超過や現預金の不足といった問題が顕著であることが印象的でした。また、法人と経営者個人のお金の区別があいまいなケースも多く、そうした実態を踏まえた支援の必要性を実感しました。
 最後に、何よりも重要な点は、「経営者との信頼関係を構築すること」「課題を一方的に指摘するのではなく、相手を尊重すること」であると学びました。シンプルで伝わりやすい説明を心がけ、経営者自身に“気づき”を促すことこそが、中小企業診断士の役割である、と実感した講義でした。



2.地域支援(講師:高田直美副支部長)
 午前中の後半は、「地域支援」をテーマに、高田直美講師より、ご自身が実際に携わった複数の支援事例をもとに、支援に至る経緯や想い、そして中小企業診断士としての地域との関わり方について、臨場感あふれる語り口でご紹介いただきました。
 最初は城東地区の商店街の支援事例です。商店街周辺は、高齢化に伴う商店の撤退や、新型コロナウイルスの影響で、地域や商店街の活気が失われつつある状況でした。
 そうした中、地域活性化の核となったのが、かつてその地域で栽培されていた伝統野菜です。地元の中学校の跡地を農園に整備し、地元住民が伝統野菜の栽培に参加。さらに地元の飲食店が伝統野菜を使った料理を提供するなど、地域ぐるみのイベントへと発展しました。現在も、地域住民や関係者が一体となって取り組みを継続しています。


 次に、静岡県の都市における「移住」をテーマとした支援事例です。この取り組みでは、地元の子どもたちも参加する交流イベントの開催をはじめ、応援パンフレットの制作やSNSでの情報発信など、幅広い活動が行われました。地域の方々が内外に情報発信を行い、主体的に地域振興に関わることの大切さを学びました。
 その後のグループワークでは、地域活性化に向けたアイデアを受講生同士で出し合いました。「地域のテーマソングを作る」「地域自作の神輿づくり」など色んなアイデアが生まれました。
 地域支援を成功に導くためのポイントとして挙げられた、①地域の協力を得ること②プレヤー・ファンを増やすこと③一体感・継続性・新規性を意識すること、の3点を、今後中小企業診断士として地域支援に取り組む中で、常に心に留めておきたいと思います。

3.強みを活かす!!知的資産経営(講師:上田正史会員)
 午後の講義では、「強みを活かす!!知的資産経営」というテーマのもと、上田正史講師が登壇され、知的資産経営の基礎から、具体的な実践方法までを学ぶ講義とグループワークが行われました。
 講義の前半では、「知的資産経営とは何か」という全体像についてご説明がありました。知的資産とは、特許やノウハウといった知的財産に加え、人材、技術力、組織力、顧客ネットワーク、ブランド力など、企業の強みとなる、財務諸表には表れない「無形の資産」を含む広い概念であり、「企業が持つすべての価値が知的資産である」という視点です。そして、自社の知的資産を特定し、経営計画に落とし込み、PDCAを回して強化していく一連の活動が「知的資産経営」であることを学びました。
 続いて、企業の知的資産や強みを可視化するためのアプローチについてもご説明がありました。「人・モノ・金・情報」の中に潜む価値、財務諸表からは読み取れない地域性や立地の特性、さらには各部門のバリューチェーンから強みの要素を洗い出す方法が紹介されました。特に、「ストーリーで考えること」「要素分解」「なぜなぜ分析」といった具体的な考え方は、企業の強みを可視化するうえで非常に有効であると感じました。
 講義の後半では、グループワークを2回にわたって実施。1回目はAIなどを活用しながら企業の強みを整理・深掘りするワーク、2回目は実際の企業の知的資産経営報告書を読み、その内容を評価するワークに取り組みました。



 本講義を通じて、①知的資産の見える化が経営の鍵であること②知的資産は「組み合わせ」で強みになる③知的資産は、金銭評価を超えた価値を持つ④知的資産は育成・補強が可能であることを学びました
 そして何よりも、「中小企業診断士が知的資産経営報告書を作成する意義は、第三者の視点から企業の強みを客観的に可視化できる点にある」という講師の言葉が印象に残り、中小企業診断士として自らの役割と価値を改めて考えるきっかけとなりました。
講義を通じて、知的資産経営は、単なるフレームワークではなく、企業の強みを再発見し、それを戦略に活かすための“実践知”であると深く実感しました。今後、中小企業診断士として企業と向き合うにあたり、非常に実践的で学びの多い講義となりました。

4.感想
 第3回目の講義を通して、中小企業支援における「実践力」と「信頼関係の構築」の重要性を改めて実感しました。
 財務分析では、数字をもとに経営の実態を整理し、経営者の気づきへとつなげるプロセスを学びました。地域支援では、地域の課題や住民の想いに寄り添い、地域全体を巻き込んで活性化へとと導くアプローチの重要性を理解しました。 知的資産経営では、企業が認識していない強みを明らかにし、戦略的に活かす視点を得ました。
 いずれの講義にも共通していたのは、「相手に寄り添う姿勢」と「わかりやすく伝える力」の大切さです。支援の現場では、専門的な知識や分析力だけでなく、経営者の立場に立って本質的な課題に向き合う姿勢が求められることを再認識しました。
 今後、中小企業診断士として企業と関わる際に、企業の経営者や従業員との信頼関係を基盤としながら、実効性のある支援ができるよう、引き続き姿勢とスキルの両面を高めていきます。

5.次回(第4回)の予定
日時:2025年8月17日(日)9:15~16:45
会場:中央区明石町区民館
(東京都中央区明石町14-2)
講義内容:
① 図書発表「マネジメント 基本と原則」(講師:鈴木康文会員)
② 社会貢献事業(講師:宮田昌尚会員)
③ 人事戦略(講師:木村和広会員)
④ 外国人人材活用(講師:船橋竜祐会員)

(三好顕一郎会員、齋藤秀文会員、高橋薫会員)

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