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[2023/08/04]国際コラム ブラジル

東京都東部は日本の中でも外国人居住者が多い地域です。当コラムでは国際部より外国の文化理解や仕事に役立つ情報を紹介します。ギリシャに続く第2回は、筆者が2008年からサンパウロの現地法人に駐在したブラジルについて紹介します。前駐在先でもあった当時の米国では、リーマンショックで混乱し映画で見るような段ボールを抱えて会社から出てくる人を見かける悲壮感が漂う状況だったのに対し、ブラジルの市民たちは我関せずで、人生を謳歌しているように見えたものです。

(1)基本情報、日本との関係
ブラジルは南米大陸の東岸中央部に位置し、ウルグアイ、アルゼンチン、パラグアイ、ボリビア、ペルー、コロンビア、ベネズエラ、ガイアナ、スリナム、フランス領ギアナと国境を接する南米最大の国です。
ブラジルの国名はブラジルという名の木に由来すると言われており、現地の発音はカタカナ表記ではブラズィウが近いです。
国民は様々な人種・ルーツを持つ人々から構成されていますが、日本からの移民は1908年に移民船「笠戸丸」がサンパウロ州のサントス港に入港したのが本格的な始まりとなっています。特に日系人はその勤勉さからもブラジル国内において高いプレゼンスを得ていますが、その道のりが平坦ではなかったことは、小説「ワイルド・ソウル」(垣根 涼介() 新潮文庫)に描かれています。

 <ブラジル連邦共和国基本情報>
・面積:851.2万平方km(日本の22.5倍)
・人口:約21,400万人(2021年)
・首都:ブラジリア
・言語:ポルトガル語
・宗教:カトリック約65%、プロテスタント約22%、無宗教8%(ブラジル地理統計院、2010年)
・議会:二院制(上院81名、下院513名)
・政府:ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ大統領(2023.1.1~)
・在留邦人:47,472名(202210月現在)(外務省在留邦人数調査統計)(日系人総数推定 約200万人)
・主要産業:製造業、鉱業(鉄鉱石他)、農牧業(砂糖、オレンジ、コーヒー、大豆他)
GDP16,089億米ドル(2021年:世銀)
・一人当たりGNI7,518米ドル(2021年:世銀)
・通貨:レアル
・日本からの輸入(自動車部品、二輪車部品、工具、事務機器等)51.5億ドル(2021年)
・日本への輸出(魚肉、果実、大理石など)995.3億円(2021年)
(外務省HPより)

 

(2)生活、文化
①生活
陽気で明るく情熱的で、家族との時間を非常に大切にするというのは、ラテン系の共通項ともいえます。週末は親子三代が揃ってシュラスコ・レストランで遅い昼食をゆっくり楽しみ、贔屓のサッカーチームの試合がある日はバールというビールも飲めるコーヒー・スタンドでテレビ観戦をしながら試合展開に一喜一憂するというのも典型的な過ごし方となっています。

②文化
ブラジルにおいてサッカーは文化です。特にセレソン(サッカーのブラジル代表)の試合は老若男女が熱狂します。点数が入ると街中で花火があがり、勝てばブラジルの国旗をはためかせたバイクが走り回り、車はクラクションを鳴らしまくるので、テレビを観なくても試合結果は自ずと分かります。一方、ブラジル人は打たれ弱いところがあり、セレソンが負けた翌日は街中がシュンとなります。
一方、サンバは一部の人は熱狂しますが、多くのブラジル人にとってはバケーション・シーズン捉えられているようです。

③食
ブラジルの食で有名なのはシュラスコかと思いますが、食べ放題のシステムは日本でも同じですが、現地ではおしゃべりに夢中になっていて冷めてしまった薄切り肉を捨てるためのお皿が配られます(当時、SDG’sという観点はありませんでした)。
サトウキビから作られるブラジルの蒸留酒は産地の違いでカシャ―サまたはピンガと呼ばれ、ライム・砂糖・氷とかき混ぜるカイピリーニャというカクテルは飲みやすく非常に危険です。
その他の食に関しては、移民の国であることから、宗主国のポルトガル、ドイツ、イタリアさらにはレバノン・シリアの料理などバラエティに富んでいます。

(3)資源・産業
①資源
農畜産物においては、大豆、サトウキビ、牛肉、コーヒー等、鉱物資源においては、鉄、銅、ニッケル、ボーキサイト、マンガン、ニオブ等の世界的な生産量・輸出量となっています。海底油田から石油も採れる資源大国です。

②産業
世界第3位の商用ジェット機メーカーのエンブラエル(同社HPより)がある一方、自動車や電化製品のメジャーな自国ブランドが無く、相対的にヨーロッパ・ブランドが強いイメージがあります。

③外資系企業の進出
 ブラジルに進出している日系企業は数多くありますがブラジルは保護貿易的であり法制や税制が複雑で、日系企業のみならず撤退する企業も多くあります(2020年にはソニーがアマゾン・マナウス工場を閉鎖)。日本ほどの解雇に対する硬直性は無いものの、企業は利益の一定割合を従業員に分配することが義務付けられている等、労働者保護が強いことも特徴的です。

 (4)観光
 筆者の住んでいたサンパウロは観光目的で訪れるのはお勧めしませんが、リオ・デ・ジャネイロやイグアスの滝などは、日本からの総移動時間が30時間超えることを考えても訪れる価値はあると思います。なお、アマゾンに行きたがるのは日本人が多いそうです(川■浩探検隊の影響でしょうか)。

(5)所感
 筆者のブラジルでの生活経験は表層的なものに過ぎなかったかも知れませんが、何をもって幸せな生き方と言うのかを問い直す非常に良い機会となりました。異国に生活し異文化に触れることの醍醐味は、人生観が変わるとまでは言わなくとも、違ったものの見方に気付かされることにあるのかもしれません。

(6)お知らせ
国際オープンセミナーが2023819日に開催されます。インドネシア、マレーシア、シンガポールを中心にアセアン地域の現在の経済状況と将来の展望についてのセミナーに加え、久しぶりのリアル開催となる懇親会では地域別に就業・生活経験のあるメンバーと語らう場を設けますので、海外での就業経験のある方、海外展開に興味のある方などにはお勧めです。お申込みはJ-SMECAのイベント情報からお願いいたします。

(黒田 康司)

Mailkoji.kuroda@coquets.net

URLhttps://furuishiba-consulting.coquets.net/

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