学びの場
[2025/1/11] 2024 2024年度 第8回城東スキルアップコース開催報告
1月11日(土)、城東スキルアップコースの第8回目が墨田区の京島第2集会所(通称「きらきら会館」)で開催されました。
今回は6月コースと8月コースの合同で、受講生42名が参加しました。
今回のプログラムは次のとおりです。
1.商店街支援(講師:大和和道氏)
2.中小企業のIT支援(講師:高仲秀寿会員)
3.Webマーケティング(講師:小川直樹会員)
1. 商店街支援(講師:大和和道氏)
向島橘銀座商店街協同組合(通称「下町人情キラキラ橘商店街」。以下、キラキラ橘商店街)の事務局長である大和和道講師より、商店街支援に関する講義を行っていただきました。
大和和道講師は、40年以上にわたって専門小売店の営業から商店街組合や商工会議所の役員などの経験を積んできた、商店街のプロです。
キラキラ橘商店街は最寄り駅から徒歩10分ほど離れた商店街です。全国各地の商店街と同様に、昭和の成長期の頃は賑わいを見せていたものの、かつて137あった店舗が一時は62まで減ってしまったといいます。当時まだ若かった大和和道講師は、「人々のライフスタイルの変化に対応することが必要だ」と立ち上がりました。かつての商店街はモノを販売すれば人が集まってくる場所でしたが、若い人たちから「楽しい場所じゃないと行こうと思わないよ。」という声を聞いたのも大きな気づきになったそうです。そのために、まちゼミ・まちバル・100円商店街活動や販売にこだわらないイベントの誘致など、大和和道講師が長年にわたって取り組んできたアイディアに満ちた数多くの施策を実施したとのことで、店舗数は77店舗まで回復しています。
そして今後は外部との連携事業が重要になるとのことです。例えば大学など他業種との交流、東京ソラマチが近いことによる観光を意識した取り組み、視察の受け入れなど、幅広い事業の可能性があるということも学ぶことができました。
最後は、「地域に暮らす人々の安心安全を守るのは人と人との絆を作るハートであり、商店街がその担い手となるのだ」という強いメッセージによって、講義の締めくくりとなりました。
大和和道講師のキラキラ橘商店街に対する熱い思いに感銘を受けると同時に、商店街支援の具体的なイメージをつけることができ、今後の中小企業診断士活動における幅を広げていきたいと思いました。
2. 中小企業のIT支援(講師:高仲秀寿会員)
午後最初の講義は、高仲秀寿講師より、中小企業のIT支援の講義を行っていただきました。
主な構成は、(1)コロナとAIで変わったビジネス環境、(2)中小企業とIT支援と診断士、(3)公的支援制度とIT活用事例の紹介、でした。
講義ではまず、コロナ禍によって変化したビジネス環境を概観しました。現在は補助金によって急拡大したデジタル投資をどう回収するかのフェーズであること、コロナ収束に合わせて減少したテレワークに中小企業が取り組むことで、テレワーク就業を求める人材が獲得可能な状況である、ということを説明していただきました。人材不足解消のためにもITが重要であることを知り、組織や人事についても支援を行う中小企業診断士がITを学ぶことの重要性を改めて実感しました。
次に、中小企業におけるIT活用の状況として、売上に対するIT投資比率1%未満の企業が7割を超える現状は十分な投資を実施している企業は少ないことが紹介されました。そして、中小企業診断士には、より企業に寄り添った支援が期待されており、IT活用に乗り遅れないよう経営者の背中を押して勇気づけること、ITベンダーとの橋渡し役になることなどを支援例として挙げられました。
IT支援と中小企業診断士の関わりでは、企業の相談に対してすぐにITツールを提案してはいけない、と指摘されました。業務プロセスのヒアリングや現状分析により問題の本質を見極め、経営の視点から課題に落とし込むことがまずは重要です。IT導入は問題解決の手段であり、経営視点からその手段を検討できることが中小企業診断士の価値である、と述べられました。
最後に、支援先の成長を実現できる提案を行い、経営課題を達成することがゴールであること、現場に入り込んだ支援が中小企業診断士の真価を発揮するところであると受講生を鼓舞し、講義を終えられました。
講義を通し、中小企業の実態、ITの重要性を学び、今後の活動においては力を入れていかなければいけない分野であると強く感じました。
3. Webマーケティング(講師:小川直樹会員)
午後二つ目の講義は、小川直樹講師より、Webマーケティングの講義を行っていただきました。
主な構成は、(1)ホームページ診断の基本、(2)マーケティング・コンセプトの明確化、(3)コンテンツマーケティングによる集客、(4)オンライン広告の活用、でした。
講義では、コロナ禍を契機に企業のWeb活用が進み、購買行動が変化して営業の上流部分がWebに移行している、と現状について触れました。そのうえで「誰に、何を、どうやって売っていくか」という「マーケティング・コンセプトの明確化」が最も重要である、ということを説明していただきました。「コンセプトの明確化は、お客様の視点で考えたことがない方には意外と難しい」「そのためには、お客様に何を提供できるかでなく、お客様が何に困っているかを考える必要がある」とも述べられました。小川直樹講師が、お客様の本当のニーズという視点を一貫して意識されていた点が大変印象的でした。
ユーザーにとって価値のあるコンテンツ提供により関係性を築くコンテンツマーケティングでは、ターゲットユーザーの検索意図の分析、生成AIを活用したコンテンツの作成方法などを学びました。ここではChatGPTを使った課題が実施され、生成AIによるコンテンツ作成を体験した受講生はその文章力に驚きの声を上げていました。
講義ではコンテンツマーケティングに取り組んだ企業の事例も紹介されました。コンテンツマーケティングの実践は企業体力が必要であり、中小企業診断士による伴走支援のニーズがあり得る、ということを説明していただき、講義は終了しました。
中小企業のIT支援の講義同様、今や当たり前となっているWebに関する支援の重要性を学び、支援先企業の売上拡大のために身につけておきたいスキルであると感じました。
4. 感想
どの講師の方も現場での経験に裏付けされた専門分野をお持ちで、臨場感の溢れる講義でありました。大和和道講師のお話からは、中小企業診断士として知識の習熟に努めるだけでなく、世の中を変えていくのは創意と熱意であると、思いを新たにさせられました。
5. 6月コース次回(第9回)の予定
日時:2025年2月2日(日)9:15~17:00
会場:人形町区民館(1+2号室洋室)(東京都中央区日本橋人形町2丁目14番5号)
講義内容:
- 課題図書「マッキンゼー経営の本質」(バウワー著)(講師:鈴木康文会員)
- 課題図書 グループワーク(講師:鈴木康文会員)
- 事業承継(講師:海老沼優文会員)
- 診断士の仕事の取り方(講師:吉岡雅樹会員)
6.8月コース次回(第7回)の予定
日時:2025年2月16日(日)9:15~17:00
会場:中央区明石町区民館(東京都中央区明石町14番2号)
講義内容:
- 課題図書「マネジメント基本と原則」(Fドラッカー著)(講師:鈴木康文会員)
- 城東支部社会貢献事業(講師:宮田昌尚会員)
- 公的支援制度活用と補助金申請支援(講師:菊地和志会員)
(眞田心哉会員、大田原英樹会員、山縣直人会員、広江淳良会員)