学びの場
[2025/09/21]2025年 城東スキルアップコース 5月開講コース(第5回)開催報告
9月21日(土)、城東スキルアップ5月開講コースの第5回が中央区新川区民館で開催され、全受講生 28 名のうち、都合により欠席された2名を除き、26 名の方が参加しました。
第5回のプログラムは次のとおりです。
1.事業継続計画(BCP)
2.資金繰りと管理会計、収支計画の作成
1.事業継続計画(BCP)(講師:長島孝善会員)
午前中は「事業継続計画(BCP)」について、長島孝善講師より講義が行われました。正直なところ、中小企業診断士の試験や実務補習・従事の中でこれまであまり耳にしなかったテーマでもあり、「なぜ今回、BCPを学ぶのか?」という素朴な疑問を持って臨みました。
この疑問を払拭したのは、長島孝善講師の「災害対応のいかんによっては事業の縮小や停止もあり得る」という冒頭の一言でした。災害や不測の事態に備えることは、単なるリスクヘッジではなく、事業を続けるための必須条件である、というメッセージでした。
講義の前半では、BCPをリスクマネジメントの枠組みで捉え、「リスクを知る」「インパクト(影響)を想定する」「対策を行う」という基本ステップに沿って解説が進められました。
・東京湾周辺に震源が集中していること
・城東地区が震度6~7の揺れや延焼、洪水被害にさらされやすいこと
など、「J-SHIS map」や「洪水ハザードマップ」のデータを踏まえた具体的なリスク情報は、身近な地域での災害リスクを改めて意識させられるものでした。
後半は、グループワーク形式での「災害対策コンサル演習」を行いました。葛飾区青砥にある架空の企業を想定し、
①平時に行うこと
②災害直前に行うこと(風水害対応)
③発災後に行うこと
の3つのフェーズに分けて、5つの守るべきもの(従業員の安全、工場の加工機、倉庫の製品、車両、ITシステム)について、BCP計画を検討しました。実際にシステムを使い、地域を入力するだけで震度ごとの30年以内の発生確率が表示される仕組みには参加者一同興味津々で、「データを使った説得力ある提案ができそうだ」と感じました。
他グループの発表で印象的だったのは「避難場所の選定」に関する議論です。通常であれば距離が近いことから選ばれやすい避難場所ですが、最も近い避難場所までの経路が複雑であったため、あえてその場所を選ばないという判断が示されました。これに対し長島孝善講師からは「BCPは資料だけでなく、現場をしっかり見ることが大切」とのコメントがありました。災害対策のリアリティは机上のシミュレーションだけでは補えないのだと、強く胸に刻まれました。
今回の講義での私自身の気づきは「BCPは災害リスクが特別に高い企業だけが策定するものではない」ということです。多くの中小企業にとって、事業継続のための備えが必要であり、中小企業診断士として支援する上で無視できないテーマだと実感しました。
リスクを洗い出し、対応を具体化する過程を経営者と従業員が協同して取り組むことは、単なる計画づくりを超えて、企業としての危機対応への意識を変えるきっかけになるのだと思います。
これまでの経営診断ではBCPを扱う機会は多くありませんでしたが、今後は診断提言の中に積極的に取り入れていきたいと思います。
2.資金繰りと管理会計、収支計画の作成(講師:本田一也会員)
午後は「資金繰りと管理会計、収支計画の作成」と題して、本田一也講師から、「資金繰り」「中小企業の管理会計」「収支計画の作成」の3つのテーマについて講義をいただきました。
最初の「資金繰り」では、中小企業の実態を踏まえた資金繰りの基礎知識に加え、資金繰り表の作成方法、資金繰りの改善策、資金調達などについて、具体的かつ実践的な説明が行われました。さらにグループワークを複数回(事前課題の結果共有、消費税・法人税の計算、財務諸表分析、経営者への助言シミュレーション)行うことで、これまで馴染みのなかった「資金繰り」に関する理解が大いに深まりました。
続いて「中小企業の管理会計」では、財務会計のみにとどまっている中小企業が多いという実態を踏まえ、経営改善を進めていく上では顧客別・商品別・部門別の採算管理やKPI設定といった管理会計の視点で分析・対策立案が必要であることを説明いただきました。
最後に「収支計画の作成」では、精度の高い収支計画を作成するうえでの留意点やポイントに加え、経営改善につなげる重要事項についての解説がありました。資金繰り・収支計画・BS計画のつながりも示され、本講義のまとめとして締めくくられました。
重要性が高いにもかかわらず多くの中小企業では経理・会計・資金繰りに関する関心が低いという実態を踏まえると、中小企業診断士として経営改善を進めていくうえで重要なスキルであり、継続してスキルアップが必要と認識しました。 
3.感想
BCPと資金繰り・管理会計について丸1日かけて学びました。受講前は経営戦略やマーケティング戦略と比べるとやや地味なテーマに感じていましたが、講義を通じてその重要性を理解し、認識が大きく変わりました。
「事業継続計画(BCP)」の講義では、J-SHIS mapで東京都を確認すると、ほぼ全地域で30年以内の震度6弱以上の地震が予想されていることを知り、事業を継続するための備えが不可欠であることを痛感しました。災害発生時に早期に事業を再開するためには、事前に中核事業を見極めることが必要であり、会社の経営戦略を考えることは、有事に中核事業を見極めることにもつながると思いました。中小企業診断士として、常にBCPの観点も忘れずに助言できるように、本講義での学びを生かしていこうと思います。
「資金繰りと管理会計、収支計画の作成」講義では、キャッシュフロー計算書が「過去」を示し、資金繰り表は「未来」を示す、という違いが印象的でした。中小企業診断士からの助言・診断を必要とする企業の中には、資金繰りに課題を抱える企業も多く、そういった企業に対して問題点や経営改善策を中小企業診断士として分かりやすく、伝えることができる技術も大切であると感じました。
4.次回(第6回)の予定
日時:2025年10月19日(日)9:15~17:00
会場:新川区民館 7号洋室(東京都中央区新川1-26-1)
講義内容:
- 課題図書 楠木建著「ストーリーとしての競争戦略」(講師:鈴木康文会員)
- 公的支援制度活用と補助金申請支援(講師:佐竹聡会員)
(佐々木康之/城東支部入会予定、根上俊生/中央支部会員、桑水流啓介会員)



