学びの場
[2025/10/18]2025年度 城東スキルアップコース 6月開講コース(第5回)開催報告
10月18日(土)、2025年度城東スキルアップコース(6月開講)第5回が新川区民館で開催され、受講生28名中26名が参加しました。
第5回目のプログラムは次のとおりです。
- 事業継続計画(BCP)
- 公的支援制度と補助金申請支援
1.事業継続計画(BCP)(講師:長島孝善会員)
長島孝善講師より、事業継続計画(BCP)について講義いただきました。
本講義は前半・後半の二部構成で行われ、前半では「東京の災害リスク」および「事業継続計画(BCP)を策定する際のポイント」について解説いただきました。

冒頭で「災害対策はリスクマネジメントである」とのご説明がありました。
災害対策は「リスクを知る」「影響を想定する」「対策を行う」の3ステップで考えることが重要であると教わりました。また、災害発生による影響として、「生活環境の変化にともなう顧客ニーズの変化」「事業復旧が遅れることでの顧客離反の可能性」の2点は新たな気づきで、 そうした点にまで踏み込んで考えることの大切さを学びました。
つづいて、東京の災害リスクについて具体的なご説明がありました。特に城東地区は災害リスクが高いエリアであるとのお話がありました。自身も城東地区在住ということもあり、地震や水害などの危険を身近に感じ、身が引き締まりました。日頃から災害を他人事ではなく自分事として捉え、対策を用意しておくことの重要性を改めて認識しました。そして、被害を最小限に抑えるため、被害の影響を想定し、自社の災害対応を事業継続計画(BCP)として「見える化」しておくことが大切であると学びました。
後半では、仮想企業を題材にした事業継続計画(BCP)のグループワークを約1時間行いました。「災害リスク」「初動対応」「想定される対策」について、各チームが多角的な視点で意見を出し合い、発表を行いました。グループワークを通して、実際にどのようなことを想定し、対策を立てるべきか体感することができました。また、 自身の勤務先や経験を生かした意見もあり、自分一人では思いつかないアイデアを共有でき、多くの学びを得ることができました。
中小企業は、「会社規模に応じたできること」から始めることが重要である点、「大手企業にはない柔軟性を活かした多様なアイデア」を出すことができるという点も印象に残りました。
災害対策の必要性は理解していても、実際には取り組めていない中小企業が多いのが現状です。中小企業診断士として、災害対策の重要性を診断先企業にしっかりと伝えていくことが大切であると感じました。
2.公的支援制度と補助金申請支援(講師:菊地和志会員)
午後の講義は、菊地和志講師より公的支援制度の活用と補助金申請支援についてご説明いただきました。
(1)公的支援制度の活用
本講義では公的支援制度の内容についてご説明いただきました。中小企業は様々な課題を抱えており、それらに対する種々の支援があることを学びました。専門家派遣における、ヒアリングから経営改善計画書の策定までの流れの説明があり、相談における具体的な注意点等を具体的事例にふまえてご紹介いただきました。公的支援業務の特徴や実際に仕事を得る為の方法についてもご紹介いただき、今後のイメージがより具体的になりました。
(2)補助金申請支援
本講義では、補助金と助成金の違いの整理から、補助金を申請する際の流れと留意点についてご説明いただきました。公募要領は必ず熟読し、記載の抜け漏れ、申請要件の誤認等がないように申請を行っていくことの重要性が理解できました。補助金についての情報が集約されたwebサイトをご紹介いただき、それらの情報を活用することが有効であることを知りました。また、申請支援の際に、審査ポイントを意識することの重要性についてご説明いただきました。書類作成においてはAIとの壁打ちや記載案出力等の活用が進んでいますが、一方で、ヒアリングで会社の強みを深堀りし、審査ポイントをおさえたストーリー性、一貫性のある記載をおこなうことの重要性を感じました。
(3)補助金申請支援ワーク
最後に、経営計画・補助事業計画書の記載ポイントを踏まえて小規模事業者持続化補助金を作成するグループワークを実施しました。各グループのメンバーそれぞれが持ち寄った企業情報を基に役割分担をしながら実際に申請書の作成をおこないました。作成後はグループ間で審査をおこない、審査する側の視点を知るという貴重な経験になりました。
自社の強みを生かした様々な施策の提案があり、構成、記載方法や着眼点など、様々な気づきを得る機会になりました。
今後の補助金申請支援の際には、企業個々の特長を生かすための記載を経営者目線と審査の目線の両面から助言できるようになりたいと思います。
3.感想
今回は、事業継続計画(BCP)策定によるリスクコントロールと公的支援制度と補助金の申請支援・審査側の視点を学びました。事業継続計画(BCP)策定は後回しにされがちな分野ですが、事業を継続していくために必要なものであり、自社の実情を見直す機会にもなることを学びました。
事業継続計画(BCP)のグループワークで取り組んだ浸水被害想定値が、各チームで少しずつ異なることが非常に印象的だったため、浸水被害想定値の把握に使用するJ-SHISマップへの正確な位置設定が重要と認識しました。
補助金申請支援のグループワークでは作成した補助金申請書に対する他グループからの評価に対して「厳しすぎる」という声が上がるなど、本当に申請しているかのような雰囲気の中での発表となりました。受講生自身が実際に行っている副業を基にした補助金申請書は内容が現実的でよく考えられていたため、高い評価を受けていました。実際の補助金申請支援の際には対象ビジネスに対する共感や理解が必要であると学びました。
第5回全体を通じて、短期的な利益だけでなく、相手先企業に対して長期的な視点を持った支援に取り組んでいくことの重要性を再認識しました。
4.次回(第6回)予定
日時:2025年11月1日(土)9:15~17:00
会場:人形町区民館 (中央区日本橋人形町2-16-5)
講義内容:
①課題図書「ストーリーとしての競争戦略」(講師:鈴木康文会員)
②課題図書グループワーク(講師:鈴木康文会員)
③資金繰りと管理会計、収支計画の作成(講師:本田一也会員)
(宮本雅樹会員、徳田循会員、服部隆太会員)



