城東支部

学びの場

[2026/02/07]2025年度第9回城東スキルアップコース(6月開講)開催報告

2026年2月7日(土)、2025年度城東スキルアップコース(6月開講)第9回が佃区民館で開催され、受講生28名中19名が参加しました。

第9回目のプログラムは次のとおりです。
1. 課題図書「マッキンゼー 経営の本質」(マービン・バウアー著)の受講生発表
2. 事業承継(講師:海老沼 優文会員)
3. 診断士の仕事の取り方(講師:吉岡 雅樹会員)

1. 課題図書「マッキンゼー 経営の本質」の受講生発表(講師:鈴木 康文会員)
 本講義では、課題図書を題材として、事前に受講生がA3サイズの資料を作成し、各自2分30秒で発表をしました。
 発表では「経営の意思を明確にし、それを組織に浸透させる仕組みを構築することが重要である」という意見が多くみられた一方で、「本書は大企業向けの理論であり中小企業にどう落とし込むか」という問題意識もみられました。
 各々の着眼点が異なることで、課題図書を多面的に分析できる機会となりました。時間配分やアイコンタクト、経験や感想を盛り込みわかりやすく伝える工夫を行うことなど、プレゼンスキルも受講当初から比べると数段磨かれたように思われます。



 後半のグループディスカッションでは、今年度取り組んだ課題図書の理論を振り返りました。城東スキルアップコースでは、「大石ピラミッド」というフレームワークを用いて、経営のあるべき姿(経営理念)やありたい姿(経営ビジョン)を具現化させるために、どのように経営戦略や経営戦術を立案し、どのように実行にうつしていけばよいのか構造的に分析を図るように努めてきました。今回課題図書4冊を、「大石ピラミッド」を参考に理論の概要は何かについて議論を行いました。毎回悪戦苦闘しながら課題に取り組んできたこともあり、組織やマーケティングなど、経営理論全般について俯瞰した活発な議論が交わされました。



 特に印象的だったのは、経営理論がもつ「普遍的な真理」を、時代の変化に合わせていかにアップデートすべきかという視点でした。
 また、受講生による推薦図書の紹介では、稲盛和夫氏の『実学』などが挙げられ、受講生各自の興味関心を知る機会にもなり盛り上がりをみせました。  
 私たち中小企業診断士の役割は、こうした体系的な理論を単なる知識で終わらせず、支援現場で「動ける戦略」へと変換することです。理論と実践の往復運動こそが、中小企業の持続的な成長を支える鍵になると再認識した濃密な時間となりました。

2. 事業承継(講師:海老沼 優文会員)
 海老沼 優文講師は中小企業診断士でかつ現役の中小企業経営者でもあります。事業承継を経営当事者として経験されたことがあり、その実体験に基づいた知見には説得力がありました。

 廃業する中小企業の約半数が「資産超過(実質黒字)」という事実が示すように、経営者の高齢化が進む中、70代以上の過半数が事業承継の準備に未着手という現実があります。「後継者不足」という背景に加え、「まだ働ける」「子供に苦労をかけたくない」といった経営者特有の心理的葛藤が壁となっているようです。



 海老沼優文講師は「事業承継には『経営(役職)』と『資産(株式)』の側面があるが、まずは株式の相続対策が最重要」と強調しました。株式の分散は経営権の不安定化に直結するためです。
 私たち中小企業診断士の役割は、経営者が課題解決に向けて行動に移すための「心のスイッチ」を押し、早期の事業承継計画策定を支援することです。M&Aや公的支援も含めた選択肢を提示し、企業の存続に伴走する重要性を再認識しました。
 グループディスカッションでは、事例企業をもとに解決策を模索しました。大きな焦点は、株式と事業用資産の分散防止です。受講生からは「経営権を安定させるために株式は後継者(長男)へ集約すべき」「会長名義の不動産は会社存続に不可欠なので、除外合意を活用して散逸を防ぐ」といった具体的な提案がある一方、兄弟間の公平性を保つため次男や配偶者には退職金を活用して現預金でバランスを取るという配慮あるスキームも検討されました。
 また、単なる資産承継にとどまらず、「会長の想い(ビジョン)」の継承や、次世代を担う人材採用・育成計画の重要性が再確認されました。
 海老沼優文講師からは「会社が存続しているのは社会に必要とされている証。事業承継の手法が分からないだけで廃業するのはもったいない」とのメッセージがありました。私たち中小企業診断士は、経営者が言い出しにくい「終わりの準備」に寄り添う、良き伴走者であるべきだと深く心に刻んだ時間となりました。

3. 診断士の仕事の取り方(講師:吉岡 雅樹会員)
 吉岡 雅樹講師より、中小企業診断士としてどのように仕事を獲得していくのかについて、具体的な実体験を交えた講義が行われました。
 講義の中心となったのは、「あげるサービス」「売れるサービス」「売りたいサービス」という三段階のサービス設計です。まずは相手に価値を“あげる”ことで接点をつくり、そこから信頼関係を築きながら“売れる”サービスにつなげ、最終的に自らが提供したい本命サービスへと展開していく流れの重要性が示されました。受講生からは、「自分のサービスに導線を設計するという視点が新鮮だった」「無料での活動や情報提供が次の機会につながることを理解できた」といった声が聞かれました。
講義後半のグループワークでは、A4用紙を用いてできるだけ高いタワーを構築する演習を行いました。この演習を通じて、限られた時間と資源の中で役割分担を明確にすること、与えられた条件の中で柔軟に発想することの重要性を体感しました。



4. 感想
 本年度最後の課題図書を終え、理論の理解だけでなく、「構造的に考える力」「分かりやすく伝える力」が大きく向上したことを実感する回となりました。この学びは、セミナー登壇や提案資料作成など今後の中小企業診断士活動への活用が意識されました。

 「事業承継」や「診断士の仕事の取り方」の講義を通じて、中小企業診断士としての社会的役割と事業を行っていくための実践力の両面を改めて認識しました。
 今回の講義は、学びを「理解」で終わらせるのではなく、「行動」に変換する意識を強く促す回であったと感じました。


5. 次回(第10回)の予定

日時:2026年3月7日(土)09:15~16:45
会場:浜町区民館(中央区日本橋浜町3丁目37−1)
講義内容
1. 製造業診断(松井 淳支部長)
2. まとめ/修了式

(小川 浩司会員、永澤 敦志会員)

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