城東支部

学びの場

[2022/10/01]2022年度第5回城東スキルアップコース開催報告

10月1日(土)、城東スキルアップコースの第5回が中央区浜町区民館で開催されました。東京都中小企業診断士協会は、東京都からの要請や協力依頼に準じて新型コロナウイルス感染症拡大防止対策への協会方針を定めています。今回は同方針に基づき、感染症対策を十分に施したうえで集合型の講義が行われ24名の受講生が参加しました。

 第5回のプログラムは次のとおりです。
1.事業継続計画(BCP(講師:長島善会員)
2.資金繰りと管理会計、収支計画の作成(講師:本田一也会員)

 
1. 事業継続計画(BCP)(講師:長島孝善会員)

長島孝善会員より、事業継続計画(以下BCP)の講義を実施していただきました。本講義は災害などが発生した際に企業を守るために役立つものであり、企業のリスクマネジメントを支援する診断士としてのスキルアップを図るものでした。

災害対応とBCPについて飲食店を例に学びました。災害発生により自社の事業資源の喪失、サプライチェーンの途絶、社会インフラの停止のいずれかが発生すると、事業の縮小や停止に追い込まれます。早期に復旧ができない場合、顧客からの事業再開要求、金融機関への返済や取引先への支払いへの対応が遅れ、事業継続が危ぶまれます。被害を少なくし、初動対応や復旧を円滑にするBCPの重要性を再認識できました。

東京の災害リスクについて、南関東の巨大地震、水害、富士山噴火による降灰の例を中心に学びました。各自治体はその地域でリスクが高いと考えられる災害に対してハザードマップを作成しています。このハザードマップを用いることで、各地点での災害の影響を想定できます。この後のグループワークでは、複数のハザードマップを組み合わせて被害を想定するなど、実際の活用方法について理解を深められました。

BCPの策定では、災害によるインパクトの想定と事業復旧目標の実現に向けた事前および発生後の対策について、具体例をもとに学びました。実在する企業の従業員から提案された対応例を知ることで、どのような対策が実行できるかを実感できました。

グループワークでは、4人ずつ6つのグループに分かれて、想定会社の災害リスク、初動対応、想定される対策を整理しました。会社のある葛飾区は洪水ハザードマップが3種類もあり、災害と隣り合わせの地域です。短時間のワークでしたが、従業員の安全や被害軽減につながる多様な対策案が共有され、多くの気づきを得ました。

最後に中小企業のBCPに関する診断士の役割について説明していただきました。BCPセミナー講師、BCP策定個別支援の役割に加え、経営診断の際には災害対策の助言を入れてほしいとの企業への想いが伝わるメッセージが、心に響きました。

 


2. 資金繰りと管理会計、収支計画の作成(講師:本田一也会員)

本田一也会員より、資金繰り・管理会計・収支計画についての講義を実施していただきました。

資金繰りのパートでは、最初に資金繰りの重要性を説明していただき、その後のワークでは資金繰り表の作成や、決算書から資金状況を読み取る練習も行いました。資金繰りにおいて理解しておくべき重要な点のひとつとして、売上が拡大している時こそ資金不足になりやすいということが挙げられます。自分で手を動かして資金繰り表を作成することで、この点への理解が深まりました。さらに、純利益の中から借入金を返済していく「収益弁済」という考え方が基本であるということも学びました。この考え方で決算書を見ると、翌期の損益指標をおおよそ把握できるということが分かります。実務においても決算書からしっかりと必要な情報を読み取れるよう、知識を定着させたいと思います。また、資金繰りに問題が発生した際の改善策や資金の調達方法についても基礎知識を説明していただき、実際の企業支援につながる講義内容でした。

管理会計のパートでは、中小企業でも実践できる管理会計について説明していただきました。さまざまなデータやシステムが整っていない中小企業においても、「売上の区分別集計」をすることが管理会計の第一歩として役立つということを学びました。区分別集計とは、「取引先別」「商品別」「販売チャネル別」などに分けて売上を集計することで、売上状況を詳細に見える化するものです。「誰に、何を、どのように売るのか」という点は事業コンセプトそのものであり、これらを把握することは事業の意思決定に重要なものであると改めて感じました。

最後に収益計画のパートでは、売上、売上原価、人件費、減価償却費、借入金返済と支払利息など、項目ごとに計画作成時に留意すべき点を説明していただきました。実際に収益計画を作成する際につまずくであろうポイントを取り上げていただいたので、実務に直結する知識を補充できました。

ワークを多く組み込んだ本講義を通じて、「財務・会計の知識をブラッシュアップできた」「自分の理解が足りていないところが明確になり、さらに学びを深めたい」という声が多くあがっていました。

 

3.感想

事業継続計画(BCP)の講義では、東京の災害リスクの内容や大きさを学ぶとともに、BCPを準備することの重要性を痛感しました。講義とグループワークでの学びを活かし、経営診断や企業支援の際には、BCPの観点を取り入れたいと思います。

資金繰りと管理会計、収支計画の作成をテーマとした講義では、特に中小企業における資金繰りの重要性を再認識しました。講義で学んだ資金繰り、管理会計、収支計画の具体的な手法をしっかりと復習し、今後の実務に活かしたいと思います。

 
4.次回(第6回)の予定

日時:2022115日(土)9:1517:00
会場:中央区明石町区民館(東京都中央区明石町14番2号)
講義内容:
 図書発表「マネジメント基本と原則」(講師:鈴木康文会員)
 金融機関との円滑なコミュニケーション(講師:井上有弘会員)
 公的支援制度活用と補助金申請支援(講師:菊地和志会員)

 
(熊谷友貴会員、重松英樹会員、寺本祐太郎会員)

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