城東支部

学びの場

[2023/01/07] 2022年度 第8回城東スキルアップコース開催報告

2023年17日(土)、城東スキルアップコース第8回が、京島第二集会所(きらきら会館)で開催されました。本年度は幸いなことに、第1回から今回までリアル開催が継続しています。今回は23名の受講生が参加しました。

8回のプログラムは次のとおりです。
  1. 商店街支援(講師:大和和道キラキラ橘商店街事務局長)
  2. 診断事例(事業承継)(講師:大石正明会員)
  3. M&A(講師:近藤尚樹会員)


1.商店街支援(講師:大和和道キラキラ橘商店街事務局長)

11.講義

午前の講義「商店街支援」では、「下町人情キラキラ橘商店街(正式名称:向島橘銀座商店街協同組合)」の事務局長の大和和道氏より講義していただきました。大和氏は40年以上もキラキラ商店街の復興や活性化に尽力されてきました。商店街として戦前から今日まで活動をつづけています。奇跡的に戦時の被害を受けなかったため、木造住宅や狭い路地など懐かしい昭和の風情を今も感じることができます。本講義では、商店街活性化のために行ってきた様々な取り組みについてお話しいただきました。

平成元年に商店街のカラー舗装完成の際に、商店街の愛称を全国から公募し現在の「下町人情キラキラ橘商店街」になりました。

キラキラ橘商店街では事業の3本柱として販促事業、コミュニティ事業、外部連携事業を行っています。42年間続いている販促事業の朝市は、大和氏の商店街活動のきっかけとなりました。朝市の立ち上げは、近隣の商店街との調査・ヒヤリングを経て企画されました。しかし、当初は、理事会の協力が得られず、資金の確保もできないなどの制約がある中、商店街の個店を11軒訪問し、110軒の賛同を得て朝市を始めることになりました。この取り組みから、現状の青年部の設置を促し商店街活動の体制整備につながりました。

近年、地域密着型のキラキラ橘商店街では、ターゲット層の平日日中働く女性が買い物をする日曜日に各店が休業している「日曜営業問題」への対応が課題でした。一方、全国的な商店街活動の潮流として「商店街3種の神器」がと呼ばれる活動が注目を集めていました。そこで商店街の青年部が中心となって、近隣の大学や地域団体と連携して「つまみぐいウォーク」を企画し、継続的な商店街活動を行っています。イベントを通して日曜日の開店を促すと共に、個店それぞれの良さをキラキラ橘商店街の強みとして活用しています。

大和和道氏より、商店街の活性化のポイントは、個店自身の自助努力が必要であること、良い個店が多くあることが重要であることをお話しいただきました。中小企業診断士の商店街支援では、創業支援等の知識の必要性も指南されました。また、商店街イベントの継続のポイントにも話が及び、商店街支援に向けた学びとなりました。



12.商店街視察・散策

講義のあとは、受講生で商店街の視察・散策を行いました。

講義でお話しいただいたキラキラ橘商店街の歴史・背景を思い浮かべながら、昔ながらの長屋づくりの建物や細い路地など昭和の風情を確認することができました。明治通りと、たから通りに挟まれた路地が商店街となっており、人懐っこい惣菜店の店員さんとも会話が弾みました。一方でスタッフとの会話の中で日曜営業問題など、まだまだ課題があることも感じました。

 

2.診断事例(事業承継)(講師:大石正明会員)

大石正明会員より、事業承継支援について講義していただきました。本講義の前半に、事業承継支援の概要から相続・贈与税の仕組みなどのお話をいただき、後半に、事例企業を題材とした事業承継支援に関するグループワークを実施しました。

講義では、大石会員が実際に経験した事業承継支援から、事業承継を行う上での問題点など、貴重なお話を伺うことができました。

事業承継における中小企業診断士の役割は、決算書などを見て経営権や事業用資産を引き継ぐ際の課題の整理などがあります。加えて、現経営者へ集中している求心力をいかに後継者に転換させるか支援することも大切だというお話が印象に残りました。

事業承継の支援は、中小企業診断士が、現経営者および後継者と話し合いを何度も行います。資産の相続方法を話し合うだけでなく、承継会社の組織文化や業界の仕組みを後継者に理解させることです。さらに後継者と従業員との相性を踏まえ、時には後継者のメンタルケアも行い、事業承継を進めていかなければならないという話も印象的でした。事業承継の知識だけでなく、事業者に寄り添う人間力を養うことの重要性も学ぶことができました。

また、相続税や贈与税の基本知識と国の制度を活用した税負担対策、経営権の分散防止策と事業承継のための資金調達、家族経営の事業承継についてもお話しいただきました。税に関しては、中小企業診断士として知っておくべき知識を理解できました。

講義の後半には、実際の企業の事例を使い、事業承継の課題の抽出と助言を6グループに分かれて実施しました。20分という限られた時間でしたが、実際の現場では財務諸表を見て2〜3分で、状況を把握し、問題点を整理しなければならないと聞き、支援の大変さを知りました。事業承継支援は、企業の未来に向けて円滑にバトンを繋いでいく重要な業務であり、中小企業診断士として私たちが支援に携わる責任とやりがいを強く認識できました。

 

3.M&A(講師:近藤尚樹会員)

近藤尚樹会員より、M&Aについて講義していただきました。本講義では、事業承継支援と関連性の強いM&Aの基本的な知識をしっかりと理解することを目的とした説明がされました。

日本におけるM&Aの概況や中小企業のM&Aの目的、PMIPost Merger Integration)のプロセスを中心にお話しいただき、体系的な知識を網羅的に学ぶことができました。事業譲度、株式譲度、合併、会社分割について、売り手と買い手、それぞれのメリットとデメリットを伺いました。また、中小企業のM&Aの実態データから、よく使われているスキームとその理由をお話しいただき、多くの気づきを得ました。

M&Aは、買い手側に大きなシナジー効果を期待できる一方、うまくいかない場合、大きな損失と信頼を失うリスクもあります。M&Aの成功を高めるために、PMIを行うことを視野に入れて検討し実行する必要があることを理解することができました。中小企業庁も(一社)中小企業診断協会と連携するなどPMIの支援に力を入れているため、私たち中小企業診断士としてしっかり内容を把握していきたいと思います。


 

4.感想

講義内容を復習しながら、470m続く活気ある商店街を興味深くめぐりました。事業承継の講義では、具体例を交えた内容で、実際の事業承継時に陥りがちな注意点を学びました。M&Aの講義では、診断士として理解しておくポイントを理解することができました。M&Aに関心はあるものの、あまり知見がない分野でしたので、今回の講義の復習と推薦頂いた書籍等を参考にしながら、さらに学びを進めていこうと思います。

5.次回(第9回)の予定

日時:2023年2月4日(土) 9:1517:00
会場:豊海区民館(東京都中央区豊海町2-6)

講義内容:
①課題課題図書(マッキンゼー経営の本質:マービン・バウワー著)
 グループワーク(講師:鈴木康文会員)
②中小企業のIT支援(講師:高仲秀寿会員)
③診断士の仕事の取り方(講師:吉岡雅樹会員)

(中澤延寛会員、小林幸治会員、伊藤卓武会員)

 

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