学びの場
[2025/03/02]2024年度 第10回城東スキルアップコース開催報告
3月2日(日)、2024年度城東スキルアップ6月コースの第10回目が浜町区民館にて開催されました。30名の受講生中、24名が出席しました。第10回目のプログラムは次のとおりです。
1. 製造業診断(講師:松井支部長)
2. 成果発表
3. 修了式
1.製造業診断(講師:松井支部長)
午前中から午後の中盤にかけて、松井淳講師より製造業診断についての講義をしていただきました。「製造業診断の基本」から始まり、続けて「中小製造業の課題」「中小製造業の診断」を説明していただきました。4〜5人に分かれたグループワークを行いながら、中小製造業の診断について、受講生それぞれが自ら考える形で学ぶことができました。
グループワークでは、中小製造業の問題とその解決策について検討を行いました。各々の視点で捉えた解決策をもとにディスカッションして、製造業診断が目指す方向性を共有することができました。
「製造業診断の基本」では、一概に製造業といっても、取扱う製品が「原材料から消費者に届くまでのどの段階か」「製造方法、受注形態、用途がどの形か」という視点で様々な特徴に分類できることを学びました。製造業を支援する際には、支援先の特徴を捉え問題点や解決策の仮説をたてて臨むことが大切であると感じました。2回目のグループワークでは製造業のタイプについて取扱製品の生産量と仕様の観点で分類し、特徴や実際にあてはまる製品を考えました。受講生同士でそれぞれの視点をすり合わせることでよりイメージが明確になり、個人で考えていた時よりも理解が深まったと思います。
「中小製造業の課題」では、適切な設備更新をしないことによる競争力低下がみられると説明をされました。そのため、適切な設備投資を継続して行い、高付加価値化や生産効率向上の源泉とすることが重要であることを理解しました。またその際には、製造業の強みを活かした経営として、実際の事例を説明していただきました。実際の事例では、大手企業にはないノウハウを持ち、相談先として選ばれることで顧客を獲得したケースがありました。また、人員が限られる中小製造業が、特定の業務に特化することで生き残る戦略を築いていることも分かり、新たな発見につながりました。
「中小製造業の診断」では診断範囲や着眼点を俯瞰したうえで、中小製造業の診断レベルについて説明を受けました。経営レベル・部門レベル・作業レベルと製造業ならではの診断レベルがあり、それぞれで求められる分析と調査が異なることを学ぶことができました。
そして、製造業の財務分析をする際のポイントを詳しく解説いただきました。部門別収益の把握を行い、取扱製品により異なる収益構造を理解したうえで問題点や特徴を捉えることが重要であると感じました。さらに、原価計算の方式による違いなど工業簿記の特徴の理解も製造業診断を正しく、効果的に行うには不可欠であると認識できました。
さらに、実際の製造業プロセスからの分析についても、多くの点について学ぶことができました。無駄なコストが製造業プロセスの様々な部分で発生していますが、最終的な不良品などはコストの無駄として認識しやすいものです。これに対して、加工の不良を修正したコストについては最終的には良品として認識されるため、経営者が気付きにくい部分であることなどを説明していただきました。このように、経営者とは異なる目線でプロセスを把握できることが、中小企業診断士として感謝される支援につながるのだと改めて感じました。
3つ目のグループワークとして、製造業における「Q(品質)・C(コスト)・D(納期)」の改善が、他の2つに及ぼす影響を考えました。改善が実際にどのような方向性を指しているのかということについても各々の視点があり、グループで他の受講生の考えていることを聞き、話し合うことがとても有意義であると思いました。グループでまとめた考えや事例を全体で発表すると、また異なった視点や考え方との出会いがあり、視野を広げることができる貴重な経験でした。
加えて、製造業の加工法や用語を、具体例を交えて解説していただきました。初めて聞く加工法の名前や用語の知識は、今後の中小企業診断士の活動に役立つと感じました。そして、診断を行う際に、経営者の方や工場の方が用いる業界用語を理解し、自ら使用できることは診断先との関係を深めるために必要であると思いました。
午後からは、納豆製造業の会社を事例としたグループワークに取り組みました。ワーク内容は、工場の現場を1時間見せてもらえることを仮定して、事前に質問事項を準備するというものです。現場訪問の限られた時間を有効活用するため、事前に訪問先企業で生じていると思われる課題を想定したうえで、その確認のために何を見せてもらい、何を質問するのかを話し合いました。また、決算書をもとにその企業が抱える課題を分析するワークにも取り組みました。このワークを通じて、事業者へ訪問する前の事前準備の重要性を強く認識できました。事前入手できる情報にもとづいて、あらかじめその事業者が抱えているであろう課題を想定したうえで、それを検証するために質問・確認をする手法は、あらゆる業種で共通に使えるものであると実感しました。


2.成果発表
10ヶ月間にわたる城東スキルアップ6月コースを終えて、出席した24名の受講生それぞれがコース受講の振り返りと今後のアクションプランを発表しました。
受講生たちは3分間の発表を通じて、10ヶ月間で得られた学びを振り返るとともに、その学びを活かした具体的なアクションプランを発表しました。この発表では、自分自身の決意を表明するだけでなく、同じ場で学んだ同期の仲間たちの決意にも触れることで、より一層の刺激を受けることができました。
この決意が意味を持つためには、何よりも行動に移すことが大事です。これから診断士としての行動を重ねるなかで壁にぶつかることもあるかもしれませんが、城東スキルアップコースで得られた知識・経験・人脈が助けになるはずです。

3.修了式
城東スキルアップコースのすべての講義を終えて、修了式が行われました。
修了式では、最初に入山能力開発推進部長より、AI音声によるメッセージが伝えられました。そのなかで、受講生たちの10ヶ月間のコースを通じた出席・課題提出を評価した指数が伝えられ、今後の活動のなかでこれを引き上げていく必要があることが伝えられました。そして、すべての機会を「レベルを高め披露する実戦の場」と捉えて、積極的に手を挙げてチャレンジして欲しいとのメッセージをいただきました。「今日から、今からが本番です」という言葉で締めくくられたメッセージを耳にして、改めて身が引き締まる思いを感じました。
そして、松井支部長より、当日出席した24名の受講生一人ずつに修了証が授与されました。


4.感想
城東スキルアップコースを運営してくださった講師・事務局の皆さま、本当にありがとうございました。事務局の皆様にフォローをいただくなかで、運営側のスキルやノウハウの大事さも感じることができました。これからこの感謝の気持ちを形にするためにも、修了式で感じた決意と責任感を胸にして診断士としての行動をし続けていきます。
(柳 隆夫会員、原 健二会員、海野 輝日出会員)