城東支部

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[2023/11/23] J-Step秋大会【ワイナリー ドメーヌ・KELOS 訪問】開催報告

11月23日(木祝) J-Step (行動する診断士の会) は、2023年度の秋大会として、山形県天童市のドメーヌ・KELOSを訪問し、代表取締役 中川淑子氏、取締役 中川憲一郎氏から、ワイナリーをご紹介頂き、醸造設備見学、ブドウ園での剪定、およびワイン試飲を体験して参りました。現地参加は5名、Zoom参加7人で、視察概要は以下の通りです。

1.ワイナリー紹介(講演)

最初に普段ワイン教室に使っているというセミナールームにて、ワイナリーの紹介をいただきました。講師は勿論中川夫妻ですが、プレゼンは主に憲一郎氏が行いました。

経緯1:ブドウ農園の確保
  • ブドウの栽培から醸造までを手掛けるワイナリーを目指して、まずはブドウ畑の候補地を探したが、有名産地の長野、北海道を当たるも決まらず。
  • 農業経験ゼロからのスタートだったが、たまたまこちらに親戚の畑が5アールあったことから、市役所に紹介された地域の農業委員に話を聞いたところ、補助金等の対象となる「農家」になるには50アールの土地が最低限必要なことを知る。
  • 農業委員の方の口利きも得て、なんとか耕作放棄地等を集めて55アールの土地を確保し、2018年に「なかがわグレープファーム」としてスタート。
  • ブドウを栽培しながら、醸造は外部委託してワイン製造を始める。

 
経緯2:ワイナリー構築
  • ワイン醸造家を目指して、長野県の千曲川ワインアカデミーに1年間通う。
  • 2021年に、再構築補助金の第1回目に応募し、補助金を獲得。
  • 2022年果実酒の製造免許取得し、秋から醸造を始める。
  • KELOS(「けろーす」)は、飲んで「ください」の意味。委託醸造で最初作っていたときに、お客様から「ケロス」という響きが好評だったため、ブランド名、社名にしたもの。
  • ワイナリーとしては、ボルドーのような大規模経営型ではなくブルゴーニュの家族経営を主体としたドメーヌ型で、100%自家栽培を目指す。
  • 資本金500万円で法人化。
  • エチケット(ボトルに貼るシール)のデザインは、石塚にブドウの木、そして山々をあしらったもので、地域に特有の風景をモチーフにしたもの。
 
現状
  • 耕作放棄地をあらたに開墾してブドウ畑に設え、現在5ha(ビッグサイト1フロア×1.5倍分)
  • 畑は、9か所に点在しているが、農業用の作業車で回るには問題のない広さ
  • 水はけがよいことが、この地域の特徴であり、もともと赤玉ポートワイン等の原材料となるブドウを作っていた歴史があり、昭和40年代まで葡萄酒工場があった所。その後、工場がなくなり、卸先がなくなって困った農家はさくらんぼやラ・フランス栽培へ移行してしまった。このため、近隣の農家にはブドウ畑に関心を示して、いろいろアドバイスや支援をいただけるところもある。
  • 現在の栽培品種は、白がソービニヨンブラン、シャルドネ、セミヨン、カベルネフラン、プティ・マンサン、赤がカベルネソーヴィニヨン、メルロー、マスカット・ベーリーA、プティ・ヴェルド、キャンベルアーリー
  • 生食用は大粒のピオーネもつくる
  • ブドウは植えてから育つのには5~6年かかるから、成木の畑も手掛けるようになった。

ポリシー、方向性
  • ニッチ:日本ではあまり生産されていないプティ・マンサン、プティ・ヴェルドに力を入れている→日本の気候に合っており、温暖化対応可能というメリットもある。
  • オーガニック:ワイン用ブドウは気候に合ったもの、自社栽培のみを使い、化学農薬は極力使わず有機農薬中心(どうしても雨が多い時などは最低限の化学農薬)。肥料も有機のみ。なるべく手を加えないように、酸化防止剤最低限、過度なろ過、清澄処理、加熱処理しない。
  • 多品種少量:小さな畑で様々な品種を育ててバラエティ豊かなワインを送り出す。
 
販路その他
  • 販売は、ワイナリー兼直営ショップを大事にしている。金土のみ開店。
  • オンラインショップも開設
  • 酒販店は地元酒販店に置いていただいているのと、東京にも3か所
  • ワイン教室を開いているが、毎回満席
  • 人生の楽園出演の効果は大きく、直後にはホームページのアクセスが月100件から1万件に跳ね上がった。

 

2.醸造設備視察

中川夫妻の案内で、醸造所の中を見学させていただきました。

  • 醸造所内の動線を勘案したレイアウトとメンテナンスにより、所内はきれいに整頓されている印象(5Sのスキル活用!)でした。醸造設備の概要は以下の通りです。
  • 醸造設備は、ドイツ製の醸造槽とフランス製のブドウ用圧搾機・破砕機がメインで、液送ポンプ以外に、フォークリフトを活用して極力果汁やワインに負荷をかけずに液送する。
  • フランス製のオーク樽も最近届く。
  • コロナによるコンテナ輸送の混乱の影響で設備が揃うのに時間がかかったが、一通りの装備ができあがる。設備投資額は1700万円くらい。

3.ブドウ畑剪定体験

ワイナリーから一番近い場所にあるメルローの畑にて来年に備えたブドウ成木の剪定作業を体験しました。
剪定要領としては、基本的には左右2本ずつの枝を残し、後はすべて伐採。残すべき枝は、鉛筆くらいの太さがあり、若芽がちょうどよい間隔で出てきているものとのことでしたが、この見極めは難しいので中川夫妻に選んでもらい、それ以外の枝をドイツ製の剪定バサミで切っていきました。
中川夫妻のお手を煩わせながら、素人参加者がぎこちない手つきでそれぞれ1本ずつ剪定(この後、10倍速で同じ作業を夫妻が行い、冬の準備を完了させたことは想像に難くありません…)。

 

4.試飲

外から戻ってきたところで、お待ちかねの試飲タイムです。
今回は以下の3本を用意いただき、ワインエキスパートでもある代表がソムリエナイフ片手に馴れた手つきにて次々と開けてくださいました。

赤キャン2022
瓶内2次発酵の発泡性赤ワイン。甘味が少なく、上品な酸味とベリーを思わす香りが特徴で、乾杯酒に最適! 女性受けしそうなワインであり、さくらアワード受賞を狙えるのでは?
シャルドネ2022
白ワインの王道とも言えるシャルドネを使い、軽くマイルドな味わいに仕上げている。作り手の性格を反映したか、癖が無く、後味がさわやかなワイン。白身魚のお刺身、カルパッチョ、和食全般に合いそう。
メルロー2022
ミディアムボディながら果実味としっかりとしたタンニンが存在感を主張。こちらはチーズや肉料理というマリアージュの王道とともに、煮物系和食などとも相性が良さそう。


同日は、生ハム+ラ・フランス、ゴルゴンゾーラ、いぶりガッコ(たくあんの燻製ね)+クリームチーズといった、もうワインに合わないわけがない品々(一部参加者持ち込み)もご用意いただき、あっという間に3本とも空いてしまった次第。ごちそうさまでした!

5.謝辞

  • 中川様ご夫妻には、大変得難いワイナリー体験をご用意いただき、感謝申し上げます。今後のドメーヌの発展を心より祈念いたします。
  • また、当日は、zoomをつないで、多くの方にリモート参加いただきました。途中移動も伴い、お聞き苦しい所が多かったにも関わらず、最後まで粘り強くご参加いただいた皆様にも感謝申し上げます。

 

 J-Step(行動する診断士の会)は、春夏秋冬の年4回開催。次回冬大会は来年2月の予定です。次回も診断士としての私たちの好奇心をくすぐる興味深いテーマを用意しますので是非ご参加下さい。

(二瓶 正 会員)

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