城東支部

学びの場

[2022/1/8]2021年度 城東スキルアップコース(第8回)開催報告

一昨日降った雪が残る1月8日(土)、城東スキルアップコースが東京都墨田区の「きらきら会館」で開催され、受講生23名が参加しました。前回に引き続き会場開催となりました。

今回の講義内容は次のとおりです。
1.商店街支援(講師:大和和道氏)
2.商店街見学・散策
3.戦略と計画(講師:村上一幸会員)

1.商店街支援(大和和道氏)



午前の講義「商店街支援」では、「下町人情キラキラ橘商店街(正式名称:向島橘銀座商店街協同組合)」の事務局長である大和和道氏よりご講義いただきました。東京都墨田区にあるキラキラ橘商店街は、2021年に第16回東京商店街グランプリを受賞した魅力あふれる商店街です。
大和氏は実に40年以上も商店街振興にご尽力されている方です。講義では、商店街活性化のために行ってきた様々な取り組みについてお話しいただきました。

今に続く活動のきっかけとなったのは40年前の「朝市」の立ち上げだといいます。大和氏は当時の旧態依然とした商店街に疑問を感じ、何か新しいことをやってみようと、「朝市」の開催を提案します。しかし、理事会からは理解を得られず予算がおりませんでした。そこで、大和氏はお金を工面するために、当時の若手メンバーと一軒ずつ説得して回り、なんとか110店の協力を得て、自分たちの手で「朝市」を実現させました。
イベントは大成功し、多くの客を集めることになります。40年経った現在ではその規模は小さくなっているものの、大和氏は「あてにしてくれるお客様がいる」と、イベントを継続することの大切さを強調していたのが印象的でした。

地域密着の近隣型であるキラキラ橘商店街は、日曜営業をしないお店が多く、平日働いている新規客を取り込めないという問題を抱えていました。そこで、大和氏は、自身が客員教授を務める千葉商科大学の学生らの力を借り、日曜日の新たなイベントとして「つまみぐいウォーク」を企画します。これは、各店自慢の品を100円という少額から楽しめるイベントで、普段入らないお店への入店動機を創出するという狙いと工夫がありました。また、各店の売上から運営費を徴収し、補助金に頼らなくてもイベントを継続できる仕組にもなっていました。結果、平日昼間のメイン客層である60代とは異なる、30〜50代といった新規客の開拓に成功した本事例は、今後の商店街支援にも大いに参考になると感じました。

最後に、今後の商店街のあり方として、外部・地域・学生との連携の必要性を学びました。スーパーの誘致やドラマ撮影地としての利用促進、修学旅行生の受け入れといった取り組みは、驚きと新たな気づきを得ることができました。
講義を通して印象的だったのは、地域が昔から育む濃密な人間関係を大切にしつつ、新しい取り組みを絶えず行っているという、二つの側面でした。この二つは我々が商店街支援を行う際にも、大切な観点だと感じました。

2.商店街見学・散策

講義のあとは、実際に商店街を見学させていただきました。
キラキラ橘商店街がある京島地区は、昔ながらの長屋づくりの建物や細い路地が残っており、昭和の風情を感じる街です。ただ、その中にあっても、おしゃれなカフェや、かわいいパン屋などもあり、懐かしいだけでなく新しさも感じることができました。実際、若い夫婦がパン屋を覗いている光景も目の当たりにし、大和氏が取り組んできた様々な活性化策が実を結んでいることを確認できました。


3.戦略と計画(講師:村上一幸会員)

午後は、村上一幸会員より「戦略策定と課題解決の考え方」との題で、「仮説思考型アプローチ」についてご講義いただきました。従来であれば、本講義と付随して、グループワークを行う予定でしたが、感染状況への配慮から急遽予定を変更し、村上会員がNPOランチェスター協会のインストラクターとして日頃講義されている「ランチェスター戦略の基本」についてお話しいただきました。

村上会員は、国内のコンサルタントの多くが、ドラッカー、ポーター、コトラーの三者の戦略策定セオリーを中心に活用する現状について、「それだけでは不十分。様々な企業事例に対応するには、10以上の分析ツールが必要」と述べられています。「月に10冊位は経営書を読むべき」「成果の出ないコンサルタントには意味がない。成果を出し、お客様から感謝されるコンサルタントになりなさい」と激励を受け、今後も長い修練が必要と決意を新たにしました。



また、村上会員からは「SWOT分析の理論提唱者は、SWOTでは情報は整理できるが分析はできないと述べている」と解説を受け、SWOT分析から戦略策定を行うというプロセスが、成果を生むための絶対的な手法ではないということを発見させていただく機会となりました。

「戦略」とは「やるべきことと、やらないこと」を明確にすること、「戦術」とは具体的な戦略の実行プロセスのことであるとの説明もありました。日本企業が「方針」や「計画」という言葉を多用する理由は、日本は欧米に比べて、戦略「構想」が苦手であるからとも述べられ、それがバブル経済崩壊後の長期的経済停滞を生んでいる一因であろうと想起しました。
また、「戦略構想」のためには、やるべきこととやらないことを決断する為の「判断力」が重要な時代になっていることを認識しました。

経営コンサルタントのあり方としては、「最初に結論を述べ、その後、なぜそのような結論に至ったかの理由を経営者に対して分かりやすい日本語で伝える能力が重要」「企業の組織成熟度にあった実行可能な戦略提案をすることが大切である」等、具体的なスキルや心構えについても教えていただきました。

ランチェスター戦略については、一般的に弱者(シェア率2位以下)は、強者(シェア率1位)の戦略の真似をして自滅していくことが多い。強者戦略と弱者戦略は異なっており、弱者は弱者の戦略を採るべきだ、と講義いただき、大手コンビニ等のM&Aがどのような戦略的意図で行われてきたのかが理解できる貴重な機会となりました。

4.感想

講師の方々の熱のこもった実体験を伺い、診断士としてとても学びの多い時間になりました。商店街支援の講義では、困難な状況を切り開くにはリーダーの率先した行動が不可欠であることを学びました。戦略と経営の講義では、コンサルタントに必要な心得と実践的スキルを学ぶことで、自身の強化すべきポイントを認識することができました。残り2回の城東スキルアップにおいて、さらに1つでも多くのことを吸収できるよう講義に臨みたいと思います。

5.次回(第8回)の予定

日時:2022年2月5日(土)9:15~17:00
会場:豊海区民館(東京都中央区豊海町2-6)

講義内容:
①課題図書発表「マッキンゼー経営の本質」 (講師:鈴木康文会員)
②課題図書グループワーク (講師:鈴木康文会員)
③中小企業のIT支援 (講師:高仲秀寿会員)
④農業支援 (講師:河野悟会員)
⑤BMC活用支援 (講師:平山弘之会員)

(加藤幸人会員、船橋竜祐会員、中川雅雄会員)

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