学びの場
[2022/2/5]2021年度 城東スキルアップコース(第9回)開催報告
昨年6月から始まった2021年度城東スキルアップコースも残り2回となりました。第9回となる今回は、2月5日(土)、新型コロナウイルス第6波の影響によりオンラインで開催され、受講生21名と見学者2名が参加しました。講義内容は次のとおりです。
1.課題図書発表「マッキンゼー経営の本質」
2.課題図書グループワーク(講師:鈴木康文会員)
3.中小企業のIT支援 (講師:高仲秀寿会員)
4.農業支援 (講師:河野悟会員)
5.BMC活用支援 (講師:平山弘之会員)
1.課題図書発表「マッキンゼー経営の本質」(マービン・バウワー著)
課題図書の発表は今回が5回目で、最後となります。本書は、どのように経営システムを構築し統治能力を高めるかなど、経営の基本を学べる古典的名著 と言えるでしょう。
過去4回の課題図書の発表と比較すると、今回は各受講者とも課題図書の要点のまとめ方や発表方法がブラッシュアップされてきたことを実感しました。
そのひとつは、要点や感想にとどまらず、自らの知識やこれまでの経験を交えて聞き手の興味を引き出す発表が多くみられたということです。課題図書発表では毎回、受講生同士でお互いの発表資料とプレゼンについて評価を行います。各受講者から自分への評価を参考にすることはもとより、他の受講生の発表に向き合って評価することは自らを振り返ることにつながりました。
もうひとつは、「発声・滑舌」「間の取り方」「語りかける口調」などプレゼンの技術が格段に向上したことです。11月の講義「伝わる話し方」(一色先生)で学んだことを実践してきた結果なのだと思います。
このふたつは城東スキルアップで得た大きな成果です。
2.課題図書グループワーク(講師:鈴木康文会員)
グループワークでは、これまでの課題図書「コトラーの戦略的マーケティング」「マネジメント 基本と原則」「ストーリーとしての競争戦略」「マッキンゼー経営の本質」の経営理論を振り返りました。「各図書が戦略ピラミッドのどの位置を示しているのか?」「どのような経営理論を展開しているのか?」、これらを整理して発表するというものです。ここでは、概念的に捉えたことを短い時間でまとめて発表し、理解してもらうという一連の作業を行いました。これは企業支援で課題を抽出する場面などでも必要になる技術です。グループワークの意図を感じ取ることができました。
また、グループワークでは、各自が次に読みたい経営理論図書の発表も行いました。他の受講生の発表から新たな学びの選択肢を得るとともに、自分にとって必要な学びを具体的に考える機会になりました。
3.中小企業のIT支援(講師:高仲秀寿会員)
午後の講義一つ目は、講師の高仲秀寿会員より「中小企業のIT支援」についてお話しいただきました。コロナ禍前とは状況が大きく変わり、「非対面」「非接触」「テレワーク」「生産性向上」といったキーワードに代表されるデジタル化が一気に加速しました。しかし闇雲にIT化すれば良い訳ではなく、企業規模に合わせた当該企業の成長を目的としたIT化が重要です。そうするためには企業の、特に現場に寄り添った提案・フォローが必要であり、そこに中小企業診断士としての活躍の場があるということです。本当の課題は何か?どうすれば企業の成長につながるか?社長がやりたいことは何か?をヒアリングして経営レベルで考えることの重要性を認識しました。
IT投資と補助金などの公的支援制度の活用を合わせて提案できるのが中小企業診断士の強みです。しかし、補助金が絡むIT活用にありがちな失敗は、導入の成果が見えず、とにかく導入するものの、その後の継続利用が計画されていない点です。中小企業診断士として最低限の知識を持ち、自分でツールを試すなど常に関心を持ちながら、中小企業の経営課題解決のためのIT支援に携われるよう勉強していきたいと思いました。
4.農業支援(講師:河野悟会員)
午後の2つ目の講義は、河野悟会員による「農業支援」についてです。農業と一言で言っても、その内容は多くの種類に分類されています。例えば、きのこ栽培は林業に入るなど、まず、農林水産業の分類の知識からお話しいただきました。
続いて、農業という産業の特徴、1都3県の農業の特徴、「6次産業化」「支援施策」の取り組み状況、そして最後に農業経営相談所の説明をいただきました。
これまで農業に関わったことのない受講生がほとんどですが、聞きなれない言葉に戸惑いながらも、新しい知識を得ることができ大変勉強になりました。農業経営相談所の支援内容は、農業特有の点はもちろんありますが、企業に対する支援内容と似ている点が多く、中小企業診断士のスキルが農業支援にも活かせることが分かり、新しい選択肢を得ることができました。
5.BMC活用支援(講師:平山弘之会員)
午後の最終講義は、平山弘之会員より、企業を診断する際のツールである「BMC(ビジネスモデルキャンバス)」(以下、BMC)を活用した企業支援についてご講義いただき、城東支部の「EAF委員会」の紹介がありました。BMCは9つの要素から構成された1枚のシートで、このキャンバス上には、商品・サービスといった顧客に提供する「価値提案(Value Propositions)」を中心に、左側に自社の企業活動とコスト、右側に顧客の状況と収益の流れ)が配列され、その繋がりが示されています。
また、関連性のあるツールとして「バリュープロポジションキャンバス(VPC)」についても紹介がありました。VPCは、BMCに不足しているサービス視点を整理しやすく、顧客の課題とその背景を探求し、需要と供給の突き合わせを行うものです。これらのツールはお互いが補完関係となります。
講義の中では、具体的な企業のBMCを、受講生が意見を出し合って作成することでツール活用のイメージを掴むことができました。
「EAF委員会」については、企業診断の事業を創造するために、BMCを軸として独自ツールの開発を目指していると説明があり、活動のチャンスが広がっていることが分かりました。
講義は、ツールには得手不得手があり、目的にあった適切なものを選択していくことが必要だと認識する良い機会となりました。
6.感想
スキルアップ開始当初は相手の反応がわかりにくいオンライン開催に戸惑いがありましたが、今回の講義はオンラインの中でも本音の意見交換ができていると感じました。これまで意見交換を重ねてきたことからでしょう、グループに信頼関係が構築されてきたことを実感しました。次回はいよいよ最終講義です。城東スキルアップ以降の自己研鑽やステップアップ、受講者とのつながりなど、自身の今後のあり方を念頭に置いて受講するつもりです。
7.次回(第10回)の予定
日時:2022年3月5日(土)9:15~17:00会場:新富区民館(新富1-13-24)→オンラインに変更
講義内容:
①工場診断と品質管理 講師:小田原清会員
②まとめ/成果発表/修了式
(武田健会員、小嶋和訓会員、飯沼正博会員)