城東支部

学びの場

[2023/10/7]2023年度 第5回城東スキルアップコース開催報告

10月7日(土)、2023年度城東スキルアップコースの第5回目が新川区民館にて開催されました。32名の受講生中、30名が出席しました。

第5回目のプログラムは次のとおりです。
1.事業継続計画(BCP
2.資金繰りと管理会計、収支計画の作成

1.事業継続計画(BCP)(講師:長島孝善会員)
長島孝善講師より、事業継続計画(BCP)の講義を行っていただきました。本講義では災害対策はリスクマネジメントであり、1.リスクを知る、2.インパクトを想定する、3.対策を行うという基本的な考え方と、中小企業におけるBCPに関する中小企業診断士の役割について学びました。講義は、災害対応とBCP、東京の災害リスク、BCPで計画すること、事例を通したグループディスカッション、BCPと診断士業務の構成で行われました。



講義の冒頭では、災害が発生した場合には「人・物・金・情報」などの事業資源を喪失し、事業が停止してしまうため、早期の事業復旧を行うことができるよう「事業継続計画(BCP)」策定の必要性について説明がありました。中小企業の経営者に、いま災害で被災すると自社はどういうことになるのかを理解していただき、身の丈に合った対策を提案して、それらをBCPで見える化することが重要だと感じました。災害を発生させないということは無理ですが、災害を想定し、事前の対策で災害のインパクトを低減し、発災後の対応で事業を1日でも早く再開することを助言できるよう研鑽したいと思います。

次に、事業継続計画(BCP)で何を計画するのかにおいては、最悪のケースも想定して災害時体制や初動対応、復旧目標とそのための対策内容を決めておく必要があることを学びました。その内容を記載するBCPにはこうでなければならないという様式はありませんが、中小企業庁や東京商工会議所、業界団体などからひな形が出ています。

グループワークでは、架空の会社をもとに災害対策演習を行いました。前提情報から、同社の想定される災害リスクを国立研究開発法人防災科学技術研究所のJ-SHIS Mapや自治体発行のハザードマップで調べ、その災害リスクに基づく初動対応を検討し、最後は対策をディスカッションしました。対策の切り口としては、従業員と会社の資産を守るために、【平時に行うこと・直前に行うこと・発災後に行うこと】の各フェーズで何を実施するのかを25分間で検討しました。壁に模造紙を張り、熱く議論を交わしながら、同社に実践してもらえる対策を考え、(目の前に経営者がいると想定して)プレゼンを行いました。

長島講師からの講評では、「従業員の家族内の安否確認方法を決めさせることが必要」との話がありました。企業のBCPには直接の関係はありませんが、家族が安全であることが従業員として災害対応に取り組む大前提となるからです。

2.資金繰りと管理会計、収支計画の作成(講師:本田一也会員)
本田一也講師より、資金繰り表の作り方や資金繰り支援の基礎知識、管理会計、収支計画の作成まで、主に財務面での支援活動に必要な知識や手法について講義していただきました。



まず、「資金繰りはなぜ必要か」というテーマについて、公的機関等で担当されている創業塾の内容をベースにお話いただきました。黒字でも借入金返済のための原資がなくては資金がショートし倒産に至るケースもあることや、借入金返済の原資は「利益」であること等、改めて、現状や近い将来の資金の動きを把握することの大切さを学びました。

「資金繰り表の作り方」の講義では、事前課題で課されていた資金繰り表の答え合わせ・解説から始まり、消費税や法人税などの納税額および納税時期の把握の重要性を学びました。

また、「資金繰り支援の基礎知識」についても、売掛金回収の徹底や不良在庫の処分など、資金繰りを改善していくうえで重要な取り組み内容や、融資や補助金など中小企業の資金調達支援策についてお話いただきました。実務的で濃密な講義内容に、メモをとる受講生たちの表情からも真剣さが伝わってきました。

後半では、管理会計と収支計画についてお話いただきました。

管理会計では、「売上」は誰に(顧客)、何を(商品・サービス)、どのように(部門・チャネル)を軸に区分別集計し、「費用」は変動費・固定費を分けて整理しておくことで損益計画(予算)作成に活かしやすい管理が可能になることや、経営者の皆様に管理会計の重要さを理解していただくための「図表」について学びました。

収支計画では、売上計画の立て方から人件費・減価償却費といった科目ごとの費用の見積もり方など収支計画作成に必要な知識から、経営改善計画(405事業)・早期経営改善計画策定支援といった国の支援事業を学びました。なかでも、経営者の皆様への支援活動について、実際の事例を交えてお話いただけたことは受講生にとっても、とても大きな学びになったと思います。

今回の講義を通じて、資金繰りや収支計画をはじめとした「企業さまの将来の損益予測・計画」に関する内容は、中小企業診断士に必要なスキルであることを改めて実感することができました。

3.感想
今回の講義について、BCP策定の必要性はもちろんですが、事業内容を理解し発生する問題を想定する引き出しの多さが必要であることを実感しました。BCPを通して更なる支援の形があるのが興味深かったです。午後の授業では、会社の生命線である資金繰りについては、資金繰り表の作成方法は当然ながら、税金等の認識漏れに気をつける必要があること。また、管理会計においては分析に必要なデータが詰まっており、理解を深めていく必要があると実感しました。

プロコンとして活躍するためには、知識の幅広さと奥深さのどちらもが重要であり、城東スキルアップコースでそれを追求していきたいと思います。

4.次回(第6回)の予定
日時:202311月4日(土)9:1517:00

会場:台東区立浅草文化観光センター 5階大会議室(東京都台東区雷門2-18-9)

講義内容
・課題図書「マネジメント 基本と原則」(講師:鈴木康文会員)
・金融機関との円滑なコミュニケーション(講師:井上有弘会員)
・公的支援制度活用と補助金申請支援(講師:菊地和志会員)

(金親正和会員、松田健太郎会員、島倉典広会員)

 

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