学びの場
[2024/10/19]2024年度 第3回城東スキルアップコース(8月開講)開催報告
10月19日(土)、城東スキルアップコースの第3回目が明石町区民館で開催されました。全受講生24名のうち、20名が参加しました。
第3回のプログラムは次のとおりです。
1.課題図書「コトラーの戦略的マーケティング」の受講生発表(講師:鈴木康文会員)
2.金融機関との円滑なコミュニケーション(講師:井上有弘会員)
3.知的資産経営(講師:細野祐一副支部長)
1. 課題図書「コトラーの戦略的マーケティング」の受講生発表(講師:鈴木康文会員)
課題図書の2回目は、フィリップ・コトラー著の「コトラーの戦略的マーケティング」を題材に各自プレゼンテーションを実施しました。事前に受講生が作成したA3サイズ1枚の発表資料を共有し、2分30秒で発表しました。
前回のロジカル・シンキングと比較して、アカデミックで内容構成も複雑な部分があったため、論点をまとめることに悩んだ受講生が多かったように思います。しかしながら、前回のフィードバックを受けとめて積極的に改善することにより、資料と発表ともに進化が見られました。
章立てでまとめた資料や独自に構成した資料があり、色使いや挿絵の挿入など各受講生の工夫が表れていました。発表では、自分の考えや解釈を述べたり、ジェスチャーを交えたりなどフィードバックによる改善が見られました。また、本書はマーケティングのエッセンスが豊富で勉強になりましたが、資料作成に苦労したと素直に感想を述べた受講生もいて、場が和む場面もありました。鈴木康文講師からは、読むのに苦労した原因を探ることもポイントであるとのコメントがあり、今後、様々な書籍を読むときの新たな視点が得られました。
各受講生から、分かりやすく伝えようとする意図を感じましたので、次回はさらなる進化が見られると思います。
2. 金融機関との円滑なコミュニケーション(講師:井上有弘会員)
井上有弘講師より、金融機関との円滑なコミュニケーションの講義を行っていただきました。本講義の目的は、金融機関による中小企業の見方や金融機関の組織・行動を知り、中小企業と金融機関のコミュニケーションの円滑化に資する中小企業診断士の活動をイメージできるようになることです。
主な構成は、(1)金融機関による中小企業の見方、(2)金融機関の組織と担当者の行動、 (3)金融機関職員の実際と生の声、(4)最近のトピックと連携に向けて、となっています。
冒頭に、中小企業診断士の立ち位置として、「中小企業診断士は仲介者ではなく支援者。金融機関は社長と話をしたい。」との大切な前提のお話がありました。また、中小企業診断士、銀行員、経営者それぞれの視点の違いについて説明があり、さらに金融機関が融資審査をするときのポイントや決算書で重視する数字など具体的にご教示いただきました。
次に、中小企業診断士にできることとして、決算書の解釈支援、資金繰り表作成などによる経営者の後方支援や金融機関の懸念材料を解消するための情報・根拠の提供など、金融機関と円滑なコミュニケーションを行うための手法についてご紹介いただきました。
また、金融機関の組織について、城東地区の信用金庫を例とした各部署の役割と中小企業診断士が関わる部署やカギとなる部署について解説していただきました。さらに、金融機関職員がどのような目標をもって日々活動しているかを実際の声に基づいてご紹介いただき、金融機関での勤務経験がない受講生にとって、新たな気付きがありました。
今後、中小企業診断士活動を行うにあたり、事業性評価や伴走支援が重要であるという指針を示していただきました。
3.知的資産経営(講師:細野祐一副支部長)
細野祐一講師による知的資産経営の講義が行われました。講義の冒頭では、この理論の核心は、中小企業の強みの源泉となる、目に見えにくい資産を見えるようにすることにあるとのお言葉がありました。その後、それらをどのように抽出していくかの手法に加え、得られる効果や全体の進め方について講義が展開されました。
次に、本理論を進める上でのツールとして、2点紹介がありました。1点目はローカルベンチマークで、非財務面を表す「商流・業務フロー」「4つの視点」、そして財務面を表す「財務分析シート」の3種類のシートを活用して自社の強みや課題を把握する手法です。「4つの視点」とは①経営者、②事業、③企業を取り巻く環境・関係者、④内部管理体制、この4つの観点を表します。もう1点は、経営デザインシートです。こちらは将来を考えるものであり、ありたい姿からのバックキャスト視点で情報を的確に整理できます。外部環境の変化の部分は、我々中小企業診断士の腕の見せどころであるとのお言葉が印象に残りました。
さらに、知的資産経営支援について2社の事例が紹介されました。1社目は、ワークショップ事例です。知的資産の整理にワークショップを活用することで、社内活性化の効果が生まれた点に感銘を受けました。当時のドラマチックな経験談に時間を忘れて聞き入りました。2社目は、ワークショップ開催後のIT導入支援施策の事例です。IT支援のお手本となりました。
最後に、実際の知的資産経営報告書を用いたグループワークが実施されました。報告書と向き合い、良い点、改善すべき点の抽出に取り組みました。実際に手を動かすことで、理論をより深く理解することに繋がりました。
講義の締めくくりとして、細野祐一講師ご自身の理念と将来ビジョンを改めてお話いただきました。我々中小企業診断士が経営者へのビジョン策定のご提案をする前に、自分のありたい姿を描くべきではないかとのお言葉がありました。肝に銘じて今後もスキルアップに励んで参ります。
4.感想
10月に入り少しずつ秋を感じるようになりました。城東スキルアップコースの研修も今回で3回目を迎え、受講生も前回までの研修で得た知識を身につけ、着実にレベルアップしているように感じます。特に課題図書の発表は、初回開催時の講義である一色映里講師による伝わる話し方や、前回の課題図書ロジカル・シンキングで学んだ論理を確実に習得して、引き込まれるような発表をする方もいて少し焦りを感じます。
また、前回までの研修や懇親会を経て、受講生同士のコミュニケーションも深まり、真剣な中にも楽しさを感じる瞬間も多くなりました。質の高い研修を提供してくださる講師の方々、運営面でご尽力してくださる事務局の方々にはとても感謝しております。
5.次回(第4回)の予定
日時:2024年11月17日(日)9:15~16:45
会場:中央区浜町区民館(東京都中央区日本橋浜町3丁目37番1号)
講義内容:
- 事業継続計画(BCP)(講師:長島孝善会員)
- 製造業診断(講師:松井淳支部長)
(佐藤寛己会員、丸尾亮介会員、上田賢治会員)