学びの場
[2024/11/17]2024年度 第4回城東スキルアップコース(8月開講)開催報告
11月17日(日)、城東スキルアップコースの第4回目が浜町区民館で開催されました。全受講生24名のうち、21名が参加しました。第4回のプログラムは次のとおりです。
1.事業継続計画(BCP)(講師:長島孝善会員)
2.製造業診断(講師:松井支部長)
1. 事業継続計画(BCP)(講師:長島孝善会員)
長島孝善講師より、事業継続計画(BCP)の講義を行っていただきました。
主な構成は、(1)災害対応とBCP、(2)東京の災害リスク、(3)BCPで計画すること、(4)災害対策コンサル演習、(5)BCPと中小企業診断士業務となっています。
本講義では、災害対策をリスクマネジメントの一環として捉え、その基本概念と具体的な実践方法について学びました。BCPに関しては、多くの受講生にとって仕事で携わった経験の少ない分野になるので、皆、真剣な表情で受講していました。災害対策は、リスクの認識、影響の想定、自社への影響評価、必要な対策の実施を指し、災害時には事業資源の喪失やサプライチェーンの途絶が起こり得る一方で、顧客からの早期事業再開の要求も発生する可能性がある点も強調して解説いただきました。
特に、災害への備えとして「BCP(事業継続計画)」の策定が重要であり、災害対応を「見える化」することで迅速な意思決定と対応が可能になると説明いただきました。BCPには、初動対応から事業復旧、平時の準備までのプロセスが含まれ、災害発生時に人的・物的被害を最小限に抑える効果および事業復旧を進めやすくする効果が期待されます。
その後、東京における地震リスクや「J-SHIS Map」などのリスク可視化ツールが紹介され、地震対応におけるBCPの重要性を再度強調し解説いただきました。同様に、水害対策も取り上げられ、洪水、内水氾濫、高潮といった水害の特徴や、ハザードマップを活用した事前のリスク評価と対策立案が可能であることを説明いただきました。さらに、複数事業所を持つ企業の場合、事業所ごとのBCP策定が適切であると説明いただきました。
BCPに含めるべき項目として、①BCPの適用範囲、②災害の想定、③BCP体制、④各種リストの作成、⑤避難場所の設定、⑥従業員の行動指針、⑦被害状況の把握、⑧復旧目標、⑨インパクトの想定と対策が具体的に示されました。
講義後半は、グループワークを通じて架空企業「かつしか工芸(株)」の災害対策を助言するワークショップでした。J-SHIS Mapやハザードマップを活用してリスクを認識し、地震と風水害それぞれの初動対応や具体的対策を検討しました。模造紙や付箋を使った形式で、参加者全員が活発に意見交換を行い、水害時のフォークリフト対策などの現場の盲点にも気づくことができました。
最後に、中小企業のBCP策定における中小企業診断士の役割が解説され、長島孝善講師の具体的支援事例から中小企業診断士の重要性を理解することができ、本講義を通じて、災害対策における実践的な知識とBCPの必要性について深い学びを得ることができました。
2.製造業診断(講師:松井支部長)
午後は、松井淳支部長を講師にお迎えし、「製造業診断の基本」をテーマに講義を行っていただきました。
冒頭、製造業は日本の基幹産業でありながら、製造工程を知る機会も少なく、特殊な面や普段なじみのない分野もあることから「診断で戸惑うケースもあると思う」と話を切り出されました。一方で、国が製造業の活性化に力を入れており、城東地区においても多くの中小製造業があることなどから「共通パターンやセオリーを今日はしっかり学んでほしい」とその重要性を強調されました。
講義では、「製造業診断の難しさと面白さ」について問いかけがありました。「難しさ」については、普段、製造業の内側に入る機会や実際の話を聴く機会が少ないため、イメージしにくいことをあげられました。そして「面白さ」については、「ロジカルに数字で捉え課題をあぶり出せるケースが多い」ことを示され、決算書からビジネスモデルや課題などかなりの部分が把握でき、仮説をもって現場でそれを確認していく、という製造業診断の奥深さを教えていただきました。
また「基礎知識の解説」では、製造業のビジネスモデルや形態、工程分析や原価計算、現場でのヒアリングにおける重要なポイントなど、必須とされる知識について、実例を交えながら丁寧にご教示いただきました。
事前課題に基づくグループワークでは、事例企業の財務諸表などから経営課題を考察し、企業視察時に何を観て、何をヒアリングするかなど、具体的・実践的な内容で研修が行われました。メンバーが持ち寄った意見をすり合わせる活発な意見交換の場となり、各チームから発表が行われました。
松井淳講師からは、発表に対して「ということは?」「もう一歩踏み込むとどういうこと?」という問いかけが重ねられ、その度に受講者の思考が深まっていく過程が感じられました。
「エビデンスがないと説得はできない。動かないのです。現場調査のポイントをまず数字であぶり出していく。そして真因を見極めて打ち手を考えること」
多くの実践事例に基づくご経験からの言葉が、重く心に響きました。
4時間にわたる製造業診断の講義は、あっという間に感じられるほど、濃密な時間となりました。
3.感想
城東スキルアップコースに参加したメンバーは、一人ひとりが個性豊かで、様々な業種・経験をもった方が集っています。そして、ここではまさにその個性がぶつかり合い、切磋琢磨する、かけがえのない仲間だという実感が回を重ねるごとに深まっています。このような場を設けてくださった城東支部の諸先輩の皆様に心から感謝し、残りの期間しっかりと学びを深めていきたいと思います。
4.次回(第5回)の予定
6月開講コース、8月開講コースの合同開催となります。
日時:2024年12月7日(土)9:15~16:45
会場:江戸川区松江コミュニティ会館(東京都江戸川区松江7丁目5番12号)
講義内容:
1. 課題図書「ストーリーとしての競争戦略」(楠木建著)(講師:鈴木康文会員)
2. 課題図書グループワーク①(講師:鈴木康文会員)
3. 創業支援(講師:横山由香会員)
(山本哲会員、大久保透会員、渡邊嘉久会員)