学びの場
[2024/03/02]葛飾区立中央図書館オンラインビジネスセミナー『会議がときめくファシリテーションの魔法~プロのコンサルタントが会議運営のコツを伝授~』開催報告
空には晴れ間が見えますが、まだまだ肌寒い日が続くこの頃。3月2日(土)14時から、葛飾区立中央図書館オンラインビジネスセミナーが開催されました。タイトルは『会議がときめくファシリテーションの魔法~プロのコンサルタントが会議運営のコツを伝授~』です。講師はIT企業に勤務する黒川敏幸会員です。当セミナーはオンラインとリアルでのハイブリッド形式での開催となりました。当日は、老若男女幅広い層の48名(うち、オンライン27名)が参加されました。セミナー開始前から、講師が受講者と会話を通して交流し、会場はリラックスした雰囲気となっていました。
■セミナー概要
黒川会員は、外資系IT企業で38年間、コンサルタントとして勤務してきました。多くの会議でファシリテーター(ファシリテーションスキルを駆使して会議を円滑に進める役目をする人)として会議運営を行ってきた経験を活かし、ファシリテーションとは何か、会議をスムーズに進めるためのファシリテーションの4つのスキルについて受講者に伝えました。
今回のセミナーのタイトルにある「ときめく」とは、会議の参加者がワクワクするような会議にすることを指しており、黒川会員のファシリテーションに対する想いが込められています。セミナーの目的は、ファシリテーションマインドを学び、やってみようという気持ちになること。そして、セミナーを通じての目標は、会議の参加者として直ちに「使える」スキルを身に着けることです。
(1)ファシリテーションって何?
「ファシリテーション」とは、会議の運営を円滑に進め、中立の立場から会議を運営し、メンバーの参画意識を高め、建設的な議論を促す、合意形成を目指す手法であると定義されます。
ファシリテーションがなぜ必要なのかというと、ファシリテーターがいない場合、会議の目的がわからない、話が脱線する、1人の意見に引きずられると言ったことが起きます。
黒川会員はファシリテーターという存在は2つの側面を持つと言います。一つは、客観的に議論の交通整理をする「警察官」の側面。もう一つは、中立の立場に立ち、参加者の発言を尊重する「正義の味方」という側面です。
ファシリテーションに関する基礎的な知識を紹介した後は、ファシリテーターはどのようにふるまうべきかを受講者に問いかけながら、セミナーは進められました。「こんなときどうする?」という形で直ちに使えるスキルも紹介しました。黒川会員がファシリテーターを担当してきた中で大切にされていたのは参加者の自主性を促すことです。具体的には、会議で出た意見を参加者同士で整理させる、沈黙でも発言を急かさずに待つといったことを通じて参加者の自主性を育むべきだと言います。受講者も講師からの問いかけを通じて熱心に耳を傾けていらっしゃいました。
セミナーの合間には、左脳と右脳の利き脳診断テストを実施し、受講者の集中力を切れさせない工夫が施されていました。(2)ファシリテーションのスキル
セミナーの後半は、ファシリテーションの4つのスキルについてお話いただきました。
- 会議準備のスキル:場を作り、つなげる
会議の成功には、事前の準備がカギとなります。会議の目標、進め方、時間配分、資料の準備など、事前に検討しておくべき事項の説明から始まりました。
いきなり多くの事項の説明に入ったため、受講者の中には「自分にできるのだろうか」と懸念をもった方もおられたかと思います。
懸念の解決方法として「ChatGPT」を使った会議準備の方法についての紹介がありました。「ChatGPT」に会議の目的を伝えたうえで、会議の進行表を作成してもらう、会議で話すべき論点を整理してもらうなど、実際に「ChatGPT」の画面を見せながら活用方法の説明がありました。1つめの魔法の種あかしです。受講者の皆様も「ChatGPT」にこんな使い方があるのかと驚いていました。
- 対人関係のスキル:受け止めて、引き出す
説明の冒頭に動画によるクイズが出題されました。動画の内容は、一見会議とは関係ない映像(https://www.youtube.com/watch?v=IGQmdoK_ZfY)ですが、会議の参加者、良いアイデア、見逃されがちな論点などファシリテーターが注意しなければならない部分が示唆された内容になっていました。受講者もクイズに熱心に取り組まれており、答えがわかった際には大きくうなずく方や、「おお」と驚嘆の声を上げる方もいらっしゃいました。
対人関係のスキルとして、重要なのは相手を尊重する傾聴のスキルです。黒川会員から議論を広げ、深めるためには相手の考えを聞くためのオープン質問、YesかNoで答えられるクローズド質問の2つを使い分けていくことが重要だと説明がありました。クイズ形式で受講者にどうすれば、相手が答えやすい質問になるかを考えてもらうことで、2つの質問をどう使い分けるかのイメージを持てるようになったと思います。
- 整理のスキル:かみ合わせて、整理する
ファシリテーターが身に着けるべき整理のスキルとして2つ挙げていました。あいまいな主張の根拠や解釈を明確にする手助けをし、参加者全員の認識をそろえ、迷子を減らすこと。もう一つは、問いかけを通じて議論を具体化させて、議論の解像度をあげることです。
その理由として、物事の捉え方は、人それぞれであり、主張の根拠も人それぞれとなり、会議の中であいまいな主張が飛び交うことは普通であることの説明と共に、ファシリテーターの問いかけの重要性を伝えていました。
- 合意形成のスキル:まとめて、分かち合う
黒川会員は、会議中の意見の衝突は良いものだと言います。なぜなら、意見の衝突を避けずに協調的な解消を目指すことでより良い合意形成を生むことができるためです。相手の発言の意図や背景を質問で掘り下げつつ、参加者の納得感のある結論を生むことがファシリテーターの重要な役目です。また、会議の最後には参加者全員で「振り返り」を行うことで、次の会議に繋げることが大切であると訴えました。
4つのスキルを紹介した後に、黒川会員自身がどういった問題意識からファシリテーションを学ぶようになったのか話がありました。新人の頃に会議の中でうまくいかなかった点や失敗した点を振り返り、徐々にファシリテーションを意識していくようになったこと。そしてファシリテーションを学ぶことで会議が「つまらない」ものから「楽しい」ものに変わっていったという過程は特に印象的でした。会議が楽しいものになることで、自身のチームメンバーも活発に発言をするようになっていったと言います。昔から「3人寄れば文殊の知恵」と言いますが、ファシリテーションを通じて、個々人の意見やアイデアをより良い、大きなものにまとめていけるようになることが2つめの魔法の種あかしとのことでした。
(3)リモート会議で使えるファシリテーションノウハウ
コロナ禍を経て、リモート会議が増えてきました。ファシリテーションは、対面でもリモートでも使えるテクニックであると言います。ただし、リモート会議の場合はボディランゲージや表情が見えない点を意識して会議を進める必要があると留意点を指摘していました。
(4)最後に
講師である黒川会員から受講者に対して、ファシリテーションは実践することが大事であり、今日学んだことの一部だけでも実践してほしいとお願いしました。
受講者には、黒川会員が実際に利用しているチェックリストが提供されました。会議をやる際にチェックリストに書いてある内容をもとに会議準備を進めていけるため、受講者にとっても有益なツールとなると思います。
また、最後に質疑応答が行われました。「チーム内で誰がファシリテーターをやるべきか」、「振り返りはどうやって行うのか」など、実際にファシリテーションを現場で活用するための具体的な質問が上がっていました。
講義の詳しい内容は、城東支部YouTubeチャンネルで視聴することができます。皆さまもぜひ職場でファシリテーションという魔法を活用して、ときめくような会議にしてみてはいかがでしょうか。
https://www.youtube.com/channel/UC02aQ5x96w0Qm5ZE-PRp1Lg/videos
(小野内勇人 会員)